「もしも」の時のことを「いつも」の仲間で考えよう
私たち「むすびえ」では、地域ネットワーク団体を通じたこども食堂への支援の一つとして、防災についての取組「こども食堂防災拠点化プロジェクト」を行っています。 この活動の一環として、こども食堂防災研修を開催しておりますが、今年度は全国各地のこども食堂関係者の方たちと「防災」を通じた学びと交流を企画しました。第17回目はさいたま市です。
さいたま市子ども食堂ネットワーク主催のもと開催され、市内のこども食堂運営者や支援企業、市外からも参加者が集まりました。 さいたま市子ども食堂ネットワークでは、毎年「こども食堂×防災」の取り組みをされており、地域の企業との連携や子どもと一緒に行う防災活動など多岐にわたって実践されていますが、年始に発生した能登半島地震で現地のこども食堂運営者の活動や、むすびえの防災SNSグループで東日本大震災を経験した運営者が励ましていたことなどを受けて、今回の運営者向けの研修を企画されましたので、その様子をレポートいたします。
主催のさいたま市子ども食堂ネットワーク代表の本間香さんの挨拶で始まりました。
「今までいろいろな場所で、いろいろなシュチュエーションでやってきました。防災倉庫を各区でやっています。さいたま市、防災に強いこどもネットワークとして、今日もみなさんといっぱい話しながら、アイデアを出し合いながらやっていければと思います。最後まで楽しみましょう。」
講座に参加する埼玉県子ども食堂ネットワーク代表の東海林尚文さんは、
「防災は非常に重要な部門であると感じます。海はありませんが、地震も水害もあります。こども食堂が担っていかないといけないことが少しずつ増えているのではないかと感じます。勉強させて頂きたいです。」
と意気込みをお話されました。
防災は心の備え・マッサージは心のケア
プログラムの最初はハンドマッサージです。
「心の不安を少しでも和らげる手と手!親から子に、子から親にぬくもりを伝える」
というメッセージのもと、ハンドマッサージの講習が行われました。
講師は、さいたま市子ども食堂ネットワークの蓜島藍さんです。
「頑張っている方の手ですね、など声をかけながらしましょう」
と講師指導のもと、参加者で2人1組になり、お互いの手をマッサージしました。
「防災」に興味を持つことが備えの第一歩
防災講座の講師は、むすびえの森谷哲(防災士)です。
「災害時にどれぐらいライフラインが止まるでしょうか?」というクイズから講座はスタートしました。
こども食堂と防災の共通点を中心に、こども食堂防災マニュアルの内容に沿った「知る・備える・行動する」という3段階で行動に移していく『防災』の説明で、日ごろの活動を防災視点で再確認しました。
講師自身の避難経験の話では、2019年の台風19号で、被害はなかったものの自身も避難所へ避難し、運営や支援に回ったことで知った、避難所の子どもたちとの関わりや、その子どもがどんなストレスを抱えていたのかなど、具体的にお伝えしました。
また、普段から携帯している防災グッズの紹介では、いざという時に役立つ防災グッズ(モバイルバッテリーや常備薬、ミニ雨ガッパなど)を、いつもカバンの中に入れておくというもので、参加者のみなさんも注目していました。
想像することの重要性
訓練はおなじみ、参加者を大人役と子ども役の2手に分け、「もしもこども食堂開催中に火災が起きたら」という想定訓練です。 調理中に発災し全員避難するところまでが一連の流れですが、今回は、ひとりの子どもがトイレに隠れているというアクシデントを組み込みました。
- 慣れていない場所、どこに何があるのかわからない場所での避難は難しいと感じた。
- 怒られているような気がしました。怖かった。誘導の言葉がけがとても大事だと感じた。子どもたちが安心して、「ついて行っていいな」と思える声がけを考えたいです。
- 北風と太陽みたいに、強く声がけするか、優しく声がけするか。子どもの様子をみて考えなくてはいけない。
- もし、会場の外に逃げた時、車などにも気をつけなくてはいけない。外に出たら、「手を繋いで待っていようね」と呼びかける必要もあるかもしれない。
短時間の想定訓練ですが、多くの気づきが生まれ、参加者それぞれが想像をめぐらす時間になりました。
参加者からの声(アンケートより抜粋)
- 運営者として利用者の避難誘導をスムーズ行えるようにするためには、何度も訓練が必要であると同時に役割分担についても話し合っていくことが大事だと思いました。 例えば、先頭に立って避難経路へ導く人、各部屋の最終チェックを誰がどこをしてから建物の外へ出るのか、人数確認は誰がするのか等を明確にしておくこと等々、次回のこども食堂の時に話し合っておきたいと思います。携帯防災グッズは参考になりました。実際に用意してみてこども食堂の利用者と備えてもらえるように話してみたいです。
- 実際に訓練してみて良かったです。 子どもへの声かけ、どういった子どもがいるか。日頃からみんなで話して訓練をしていないと、いざとなった時にパニックになると実感しました。 自分たちのこども食堂に持ち帰り、伝え実践してみることが大事だと思います。
- 避難訓練 が良かったです。部屋の中でできることに気がつけて良かったです。
主催団体の感想
運営者さんにとって、ものすごく実践的で身になったと感じています。それぞれのこども食堂に持ち帰って、アレンジして防災行動に繋げられるなと感じました。
さいたま市はこども食堂の防災の取組として、Jリーグの浦和レッズさんと協働で3回活動しているほか、昨秋には、市内の800人のこどもが、それぞれ通いなれたこども食堂で段ボールトイレを作成する取り組みも行いました。今日のことをすぐに活かせる土壌はできていると思いますので、運営者みなさんの今後の活動に期待して、さらに活動を継続していきたいと思います。
研修に参加して
代表の本間さんがこども食堂防災SNSグループでのやり取りを見ていて、能登半島地震で被災された現地のこども食堂運営者が、地域の方へ食事提供だけでなく一緒にハンドマッサージもされて、心のケアをしていることを知り、有事の時は、大人にも子どもにも心のケアが重要だと感じ、私たちにもできる!練習しよう。と可能性を見つけて、今回の研修にハンドマッサージの講習も加えたとお聞きしました。
「学ぶこと、訓練すること、想像すること」を、より実践的にプログラムされておりました。
そして何よりこの研修は、ネットワークの「いつも」のメンバーが集まり、防災のことを話そう!という、お茶会スタイルです。
リラックスして、より柔軟なアイデアを生み出す仕掛けになっていたと思いました。
「食」を通じたコミュニケーションがとても心地よい時間でした。
■イベント概要
開催日時:2024年2月29日(日)14:00~ 16:00
開催場所:土呂子ども食堂(北区土呂町2−12−20)
講師:森谷哲(防災士・むすびえこども食堂防災拠点化プロジェクト)
内容:「もしも」の時のことを「いつも」の仲間で考えよう
~こども食堂防災研修 IN さいたま市~
共催:さいたま市子ども食堂ネットワーク
認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
「こども食堂防災拠点化プロジェクト」とは?
そこに集う人々の安全確保はもちろん、通常時だけでなく、有事の際にも地域の安心、安全な場として存在できるように、こども食堂の防災力を高めることを目的としています。
また、こども食堂の主体的な防災活動につながるよう、それぞれのこども食堂に「私たちに出来る防災」「地域みんなの防災」について考え・備える機会として防災研修や、さまざまな防災活動の支援提供をしています。
この活動を通して、地域における交流拠点(こども食堂)の認知向上と、つながりを再確認する機会の創出にも寄与しています。
こども食堂での防災研修、訓練をお考えの際は、是非ご相談ください。
本件に関するお問合せは、下記メールアドレスまでお願いします。
bousai@musubie.org(担当:森谷、佐甲、和泉)