私たち「むすびえ」では、地域ネットワーク団体を通じたこども食堂への支援の一つとして、防災についての取組「こども食堂防災拠点化プロジェクト」を行っています。 この活動の一環として、こども食堂防災研修を開催しておりますが、今年度はこども食堂防災研修2023全国ツアーと題して、全国各地のこども食堂関係者の方たちと「防災」を通じた学びと交流を企画しました。第15回目は香川県三豊市です。
三豊市社会福祉協議会の主催で開催され、こども食堂運営者の方はもちろん、高齢者の居場所づくりを行っている方、防災士の資格を持つ方などに参加いただき、地域に開かれた研修となりましたので、ご報告申し上げます。
三豊市社会福祉協議会常務理事・事務局長の小野敬二さんの挨拶でスタートです。
「いつ何時、地震災害が起こるかわかりません。そのときの対応、それ以降のケアなど、居場所のコミュニティで常日頃つくられているコンビネーションが活かされると思います。
また、罹災後、普段の地域の居場所が支援の拠点なっていくとも思っています。三豊市地域のこどもの居場所づくり、地域づくりに活かしていきたい。」と想いを語られました。
「いつも」の取り組みが「もしも」に役立つ
愛媛県宇和島市で活動されているU.guranmaJapan代表松島陽子さんから、こども食堂で実践している「防災」の活動をお話しいただきました。
愛媛県宇和島市では、2019年の豪雨災害で、「もしも」が起きてしまいました。
その体験から「もしも」は起きる。「いつも」の活動が大事。という教訓を得て、災害時に使うデリバリーステーションという炊き出し機材を日ごろのこども食堂で実際に使い、地域の方と炊き出しを行うなどフェーズフリーを実践しています。
こども食堂と防災の共通点
災害時に必要な共助をイメージすると、普段のこども食堂とたくさんの共通点があります。
① 多世代交流の場になっている
② 継続したボランティア活動
③ 地域との協力体制
④ 大量調理・衛生管理ができる
この共通点を活かして、こども食堂で防災を取り入れた活動を行っていただくために、むすびえはこども食堂防災マニュアルを作成しました。
難しくとらえがちな「防災」を「知る・備える・行動する」という3部に分けてわかりやすくまとめ、ご自分の活動しているこども食堂だったらどうだろう?と書き込めるようになっています。
私たちの活動しているこの地域は、実はどんな災害の可能性があるのだろう?
備蓄品はどんなものを、何日分用意するといいのだろう?
正しい情報はどうやって入手すればいいのだろう?
マニュアルを見ながら、運営スタッフのみなさんで一緒に考え備えるワークができるようになっています。
そして、この研修の最大の狙いは、無理なく防災を継続していくこと。
「『もしも』から『いつも』できることを想像し備える」こと。被害想定を見て不安になるのではなく、今できることをみんなで考え、「普段できる備え」に活かしていただけるように講座でお伝えいたしました。
参加者は40名と関心の高さを実感
講座に続き訓練では、「もしもこども食堂開催中に火災が起きたら」という想定の訓練を行いました。調理中に発災し、その場にいる子どもも大人も全員避難するのですが、避難口の扉が開かないというアクシデントを加えたり、避難は一筋縄ではいかないことを体験していただきました。
参加者は、臨機応変にその場の状況に対応されていましたが、訓練後の振り返りでは、「防災担当の人を決めるのもいいかも知れない」「避難の呼びかけの際、名前で呼びかけられると安心するし、聞きやすいと感じた」「子どもの人数をしっかり把握する必要があるのではないか」「想定している避難口が使えないことを考え、2つ以上の避難経路を考えなくてはならない」など、多くの気づきが共有されました。
【参加された方の声】(アンケートより抜粋)
- こども食堂が地域の防災拠点になるということをあまり意識していなかったことに気付きました。「いつも」していることが、「もしも」のときに役に立つ意識で普段から整えていこうと思いました。子育て支援拠点である場所+こども食堂もあるというメリットで地域に貢献できることがたくさんあると感じました。
- こども食堂が防災拠点に!という認識を新たにしました。地域の中で顔が見える関係、つながりが大事で防災についての訓練などできることから実践していけたらと感じた。
- 普段からできる簡単なことを日々意識しておくこと、まずは自分ファーストで備えておくことが大切だと感じた。
- 余震を「地球のしゃっくり」という話をきいて、被災したときに子どもたちとどう向き合うか、考えさせられました。
主催団体の感想
こども食堂を題材にした講座・訓練は初めてで驚きましたが、皆さん熱心に講座にも訓練にも取り組んでおられて、新たな気づきがあったと思います。三豊市地域は比較的災害が少ないということもあり、「もしも」を考える機会がなかったと感じていますが、今後も継続して防災意識を高めていくことが必要だと思っています。 また、「100%の1人より30%の3人」という話が印象深かったです。資格などを持っていないけれど、いつも防災のことを考えている方が地域にいると心強いと感じました。地域の居場所のノウハウが防災にも活かされていくのだと思います。
■イベント概要
開催日時:2024年2月15日(日)10:00~ 11:30
開催場所:三豊市市民交流センター(三豊市豊中町本山甲192-1)
講師:久保井 千勢 (むすびえこども食堂防災拠点化プロジェクト/防災士)
内容:「もしも」を話せる「いつも」の関係づくり
~こども食堂防災研修 IN 香川県三豊市~」
主催:社会福祉法人三豊市社会福祉協議会
協力:認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
「こども食堂防災拠点化プロジェクト」とは?
そこに集う人々の安全確保はもちろん、通常時だけでなく、有事の際にも地域の安心、安全な場として存在できるように、こども食堂の防災力を高めることを目的としています。
また、こども食堂の主体的な防災活動につながるよう、それぞれのこども食堂に「私たちに出来る防災」「地域みんなの防災」について考え・備える機会として防災研修や、さまざまな防災活動の支援提供をしています。
この活動を通して、地域における交流拠点(こども食堂)の認知向上と、つながりを再確認する機会の創出にも寄与しています。
こども食堂での防災研修、訓練をお考えの際は、是非ご相談ください。
本件に関するお問合せは、下記メールアドレスまでお願いします。
bousai@musubie.org(担当:森谷、久保井、佐甲、和泉)