こども食堂はいつもの場所。
普段も災害時も、何かあったら来れる場所。
私たち「むすびえ」では、地域ネットワーク団体を通じたこども食堂への支援の一つとして、防災についての取組「こども食堂防災拠点化プロジェクト」を行っています。 この活動の一環として、こども食堂防災研修を開催しておりますが、今年度はこども食堂防災研修2023全国ツアーと題して、全国各地のこども食堂関係者の方たちと「防災」を通じた学びと交流を企画しました。第9回目は福島県白河市です。
今回の防災研修の会場になった、福島県白河市の「みらいこども食堂」では、団地の中央にある集会場で定期開催しています。この場所を選んだのは、子どもたちが自力徒歩で来れる場所だからだそうです。
「平時も、有事の際も、何かあったらすぐ来れる場所。
地域の中にある「いつも」の場所を「もしも」の時に思い出してほしい。
そして、町会長さんや民生委員さんなど地域の方にも、より活動を知っていただき
子どもだけじゃなく地域の方々の交流活性化に使ってほしい。」
主催のふくしまこども食堂ネットワーク事務局のNPO法人NEXTしらかわ代表坂本様は、こんな想いで防災研修の実施に至ったとお話しされました。
それでは、むすびえ発行の“こども食堂防災マニュアル”を活用した防災研修の模様についてご紹介します。
< 講座パート >
こども食堂の活動こそが防災です
「防災」と聞くと多くの人が「必要なこと」「大切なこと」と思うのと同時に「専門的なことは何もわからない」「頼られたらどうしよう」「責任持てない」というような、「気負い」を持たれることがありますが、私たち「こども食堂防災プロジェクト」がお伝えする防災は、「だれか一人に頼る」のではなく「大切なことをみんなでシェアしよう」「みんなの得意と知恵を出し合おう」という、気負いを軽減する防災です。
さて、ではどうやって気負いを軽減できるのか。
答えはとてもシンプルです。
普段のみなさんの活動「こども食堂」こそが、すでに「防災」だからです。
普段、こども食堂運営者の方々は、ご自身の活動について口をそろえてこう言います。
「なにも特別なことをしているわけじゃない」
「私にできることをしてるだけ」
「活動を続けていたら助けてくれる仲間が増えた」
これこそが、地域防災(共助)の第一歩。
周りに共感する力のあるみなさんだからこそ、困っている人の声を代弁する力のあるみなさんだからこそ、日ごろの活動に「防災」のエッセンスを少し取り入れてみてほしい。
講師の久保井はこのように「なぜこども食堂と防災がつながるのか」を丁寧に説明いたしました。
そして、当プロジェクト発行のこども食堂防災マニュアルを使い、「知る、備える、行動する」と3つのパートで防災を具体的に考えるお話をしました。
こども食堂が防災意識を備えることの大切さや、災害時に自分たちができることの可能性を考えてもらう「きっかけ」になったと思います。
< 訓練パート >
いつもの場所だけど、もう一度チェックしよう
いつもこども食堂を開催している集会場なので、防災備品の場所や間取り、出口の場所は知っているけど、もう一度みんなでチェックしよう!という、参加者全員で再確認する訓練でした。
防災備品のチェックでは、「消火器って使用期限があるのか?」「いつまでだろう。」
こんな声が出たり、実際の訓練では、「火事だ!」と、大きな声で発災を知らせると、固まって遊んでいた子どもたちが、それぞればらばらに動き始め、誘導係だけでなく、大人全員が「あれ、全員逃げたか?」「あれ?あれ?まだいるかな?」と慌てましたが、参加者全員が靴を履いて外へ逃げました。
この訓練は、参加者全員で考える訓練なので、どこに逃げるのか、何をする必要があるのかを体験しながら考えますが、全員が靴を履いて外へ出たことは、みなさんが共通して「建物から離れた広い場所まで避難する」というイメージがもともと備わっているのだと実感しました。
振り返りの時間には、「靴があるところが出口と思い込んでしまったけど、発災元や、その時に応じて逃げれる一番近いところを考えてもよいのではないかと思えた」や、「逃げ遅れている子どもがいたら心配だと気づき考えさせられたので、最後に見回る人がいたほうがいいのか、逃げる時の大人の連携をもう一度考え直してみたい」「食堂を運営する際、ボランティアの方にお願いしたいことを事前に伝えたい」という気づきの声が出ました。
町会長の塩田様より気づきと感想をお話しいただきました。
この集会場を管理されている町会長の塩田様にも参加いただき、3.11の東日本大震災の時の状況や、それを踏まえた課題感と、これから取り組みたいことなどをお話しいただきました。
- 3.11の時は、3月だったけど本当に寒く、電気が止まってしまい、暖をどうとるのか本当に困ったので、石油ストーブや、発電機などはしっかり準備したいと気付けた。
- この地域のことに目を向けると、崖がたくさんある場所やため池の場所など、だれかが知っていれば良いことではなく、みんなで知ることが大切だと本当に感じ、今までも伝えてきているが、これからも話をしていく必要を痛感した。
- 他にもこの地域には、高齢者や支援を必要とする人がたくさんいるので、こども食堂という集まりが、地域の人を助ける事業になってほしいと願うし、どんどん輪を広げてほしい。
参加者からの声(アンケートより抜粋)
- 実際に訓練を行うことで、学び、気づきがありました。普段からどこに何があるか。何が必要か考える機会となりました。
- 各々に役割を与えるより、状況によって自分がどんな役になればよいかを考えて、行動する必要があると感じた。
- 通報係でしたが、この場所の住所が言えませんでした。ちゃんと全員が言えないと!と思いました。
- 消火器の使用期限が10年ということを知りました。
主催団体の感想
今回の研修を通して、防災について「知る・備える・行動する」ことの大切さを学びました。防災マニュアルのチェックシートは課題を可視化する上で大変役立ちました。実際に記入してみたところ、「わからない」「足りない」と感じることが多くありました。これらの課題を一つ一つ確認し、準備することではじめて子どもたちの安心安全な居場所となります。
これまでは防災について意識はしていたものの、何をどうすれば良いかが見えていなかった気がします。運営者として今後やるべきことが明確になりました。本当に学びの多い研修でした。ありがとうございました。
■イベント概要
開催日時:2024年1月28日(日)13:15~15:15
開催場所:寺小路集会場 (福島県白河市関川窪67-1)
講師:久保井 千勢 (むすびえこども食堂防災拠点化プロジェクト/防災士)
内容:「いつも」の場所で「もしも」を話そう
~こども食堂防災研修 IN 福島県白河市~」
主催:ふくしまこども食堂ネットワーク
協力:認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
「こども食堂防災拠点化プロジェクト」とは?
そこに集う人々の安全確保はもちろん、通常時だけでなく、有事の際にも地域の安心、安全な場として存在できるように、こども食堂の防災力を高めることを目的としています。
また、こども食堂の主体的な防災活動につながるよう、それぞれのこども食堂に「私たちに出来る防災」「地域みんなの防災」について考え・備える機会として防災研修や、さまざまな防災活動の支援提供をしています。
この活動を通して、地域における交流拠点(こども食堂)の認知向上と、つながりを再確認する機会の創出にも寄与しています。
こども食堂での防災研修、訓練をお考えの際は、是非ご相談ください。
本件に関するお問合せは、下記メールアドレスまでお願いします。
bousai@musubie.org(担当:森谷、久保井、和泉)