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【レポート③】こども食堂での会食再開にむけての取り組み 〜佐賀県編〜

春を迎え、全国的に会食再開に向けて動き出したこども食堂も増えてきました。

今回はコロナ禍での「お弁当配布」から「会食」という形に切り替えるという佐賀県のこども食堂と、県のこども食堂ネットワーク団体である「さが・こども未来応援プロジェクト実行委員会」の方に取材させていただきました。

「会食再開」に向けての具体的な取り組みの様子など、参考になるお話をたくさんお伺いすることができました。

特定非営利活動法人さが市民活動サポートセンター 理事 宮﨑知幸(ちゆき)さん
◆佐賀こども食堂 https://www.facebook.com/tojinkodomosyokudou/
【概要】
・場所:公民館で実施(佐賀市立勧興公民館)
・頻度:月1回 食育目的で行っているため19(イク)日に実施
   (19日が休館の場合は翌日実施)
7年ほど続けているため地域に定着しています

⬛️現在の活動状況
2020年4月からお弁当配付の活動を実施
お弁当の予約数は毎月180食前後(上限200) 世帯数は50世帯
配付する時間は16:30~18:30の時間
コンセプトは「みんなで食べる。こ食を防ぐ」
(※
「こ食」とは、生活環境などが変わったことにより現れている食事形態のことで、孤食・固食・個食・子食・小食・戸食・粉食・濃食・虚食の9つがあります)

 ⬛️コロナ禍での活動経緯
佐賀は、コロナ禍でこども食堂も休止にするというところが多かったんです。
周囲がそんな状況の中で会食を続けるのは難しいと思いすぐ弁当配布に切り替えました。
その3~4年くらい前からこども食堂を開催してきたので、せめて月1回でも保護者と交流の場を持ちたいと思い、休止でなくお弁当配布という形をとりました。
最初はコロナも正体不明な部分が多かったので話もしないで黙々とお弁当を配布していましたが、2年目頃から会食はしないけれどもイベントなどは取り入れるようになりました。
コロナ禍の3年間はそんな感じで活動しており、お弁当の配布数も最初80食ぐらいでしたがどんどん増えて今、毎月180食前後になっている状況です。

⬛️やっぱりコロナだろうがなんだろうが、「こども食堂って必要」と感じたわけ
お弁当配布の期間、入ってくるのは保護者の情報がほとんどだったんですよね。そうしたら最近、子どもを連れてきた人がいて、3年ぶりに会ったらすごく大きくなっていて…
子どもってすぐ大きくなるんだな…と驚きにも似た感覚を受けました。

 ⬛️会食再開に向けての想い
コロナ禍で突然ストップしてしまった日常ではありましたが、改めて会食の良さを感じる時間にもなりました。
保護者や子どもが抱えるそれぞれの悩みを分かちあったり、子ども達の発達の様子をそばで見守る場となる「会食」って本当に必要だなと思っています。

⬛️会食の再開の予定は?
2023年4月19日から再開します。まさに丸3年ぶりの会食です。
早いのか遅いのかわからないですが、もうそろそろ再開してもいいかなと思っています。

⬛️会食再開を決めてから、準備の過程を教えてください
当初から参加していた方とコロナ禍以降参加しはじめた方との間に感覚の差もあったので、そこのフォローという意味で会食再開に向けての説明を丁寧に行いました。
具体的には「佐賀こども食堂でのその新しい生活様式のガイドライン」作成し、2ヶ月前の開催日に全世帯に対して面談を実施しました。

※参照: 佐賀こども食堂ガイドライン

面談を進める中で、会食には時間(17:30-18:00)が合わず来られないという家庭が多くありました。やっぱりお弁当に慣れてしまったところもあると思います。
子どもは塾、お母さんは仕事という感じで。
ただ、保護者の日程が合わなくても子どものみで参加するケースは参加OKにしています。

その日はお弁当の配布はせず会食しかしないので、来ることができない人にはすみませんとお伝えしています。
それでもどうしてもお弁当が欲しいという方には、 他のこども食堂を案内したり、「佐賀コミュニティフリッジ」と言う食材を提供するところを紹介したり「自立支援センター」の方に面談に入ってもらったりして行き場がない状態にならないように工夫し、ようやく4月から会食という形に持っていきました。
やはりせっかくのご縁だし、何のためにこども食堂をやっているかと考えれば、ひとりひとりに向きあう部分は丁寧にやったと思います。

⬛️面談の方法についてもう少し詳しく教えてください
会場は公民館を利用しました。
中会議室と大会議室があり、中会議室でお弁当配布を、大会議室で面談をしました。
2名のスタッフがそれぞれ1世帯ずつ対応し、事前にgoogleフォームで取ったアンケートをベースにデータを共有して、そこに記入しながら面談していきました。

そうやって事前情報もあったので、面談自体は1世帯5分ぐらい。
50世帯ほどありましたが効率よく進めることができたので2時間くらいで終わったと思います。
その面談だけでわからなかった部分は、後からLINEを使ってフォローしています。

面談をしたのはさが・こども未来応援プロジェクトの一員でもある「自立支援センター」の方と「県庁(子どもの居場所立ち上げサポーター)」の方だったので、日頃から子どもの居場所のサポートしてくださっているということもあり、 特に問題なくスムーズに進んだのだと思います。
お二人に協力していただけたのは本当に助かりました。

⬛️再開後はどれくらいの規模での会食を予定していますか
会食再開時は、100食ほどを予定しています
コロナ前は、だいたい20世帯くらい(スタッフやボランティアを含むと60~80名)で会食していたのでコロナ前と比べると増えます。
ただこの3年間で参加者自体は入れ替えが起きています。
乳幼児から大学生を対象にしているので、ある程度の年齢になると卒業する感じですので。

⬛️感染症対策としては具体的にどのようなアナウンスをされましたか?
保護者からの心配の声もありましたが、「感染症に関しての責任は取れません。ただ対策は取っています。施設の消毒もしています。保険にも入っています。食事中の約束事としては一方向に向いて食べるようにしています。あとは個々人の判断で参加してください。」という風にお話をしています。
他に、今度から新しく参加する保護者の方へのお願いとして子どもと同じ空間にいてもらうよう項目を追加しました。食事と遊ぶ場所が別の空間なので、目を離した隙に何か起きないようにするための安全対策という意味です。
食事中に一方向を向いて食べるというスタイルに関しては、学校に合わせたいと思っています。

 

⬛️佐賀県内の子ども食堂の活動状況を教えてください
今はだいぶ活動の状況も良くなってきていて、再開してないところのほうが少なくなっています。
もちろんすべてが会食をしているというわけではなく、もともと居場所として会食に限らず活動されているところをサポートしていたので、弁当配布や学習支援など会食以外の形も含めて 8割、9割ぐらいが再開しています。

⬛️会食に関しては皆さんどんな感じですか
完全に安心という状態ではないかもしれません。気を付けながらやっている印象です。
主催者よりも参加する方や会場にしている公民館、周囲の理解まで含めると、完全にどこでも会食OKという感じではないかもしれません。

⬛️開催場所の制限などは今もありますか?
当初は公共施設での会食NGなどという状況もありましたが、今はそういった状況はないようです。

⬛️新型コロナウイルスも感染症法上の分類が5類に変わりますが、それを受けた県内のこども食堂の雰囲気はどんな様子ですか?
再開に向けて全面的に動くというほどではなく、「気を付けながら」という姿勢は当分変わらずだと思います。
その理由としては、国も県も自己判断でという形をとっているので、場所によっては地域の方がどう感じるか懸念し慎重になるところはあると思います。
他の居場所の情報や他県の情報に触れることが、安心感につながるのではないかと考えています。

⬛️ネットワークとしてこども食堂への働きかけ
 年度がかわるタイミングでもあるので、意識調査をした上で今後どういった活動に取り組むか検討しようと思っています。
「居場所」づくりとは、心の交流ができる場を用意することが趣旨だと思うのでその中で「食も」は大切なアイテムだということはで皆さん同様の認識だと思います。ネットワークとしては他がどうしているか、情報を提供することで会食率を上げるきっかけを作りたいと考えています。

もちろんネットワーク団体として「これなら安全だ」というお墨付きを与えることはできませんが、さまざまな事例をお伝えすることは今後の会食再開への検討材料にできるだろうし、他がどうしているか等の情報をたくさん知ることにより、個々での判断ができるようになると考えています。

こんな時だからこそ全国7,000箇所の事例を出し合って交流する場が必要だと感じます。

⬛️会食に関してこども食堂に伝えたいメッセージをお聞かせください
「自己判断」にゆだねられたことで、より一層判断に迷いが生じている時期です。
横の連携や共有がますます重要になってくると思います。
時として周りには味方ばかりでなく、白い目で見られたりクレームがあったりすることもあると思いますが、こんな時だからこそ横の連携や共有が必要なのだと思います。

ネットワークとしても発信方法に工夫をしながらたくさんの情報提供をしていきますので、受信する側も忙しいとは思いますが、ぜひそういった場に積極的に参加してみてはいかがでしょうか。

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