―― プロジェクトの概要
熊谷組の事業は、社会基盤である道路、鉄道、電気、ガスなどのあらゆるインフラ設備の構築や、住宅、公共施設はもとよりさまざまな建物の建設など、非常に多岐に渡ります。そして、そのどれもが私たちの暮らしの身近にあるもの。熊谷組では、そうした設備や施設の建設に留まらず、そこに集まる人と共に、コミュニティをつくりあげていくことをグループビジョンとして、掲げてきました。全国に支店および作業所があることから、同じく全国各地にあるこども食堂への支援を通じて、地域との関係性を深めようと、社員のボランティア派遣や社内フードドライブ、BCP用の備蓄品の提供等を行っています。
当プロジェクトの主管部署である、経営戦略室コーポレートコミュニケーション部サステナビリティ推進グループ課長の澤田 祐子さんにお話を伺いました。
―― 支援しようと思ったきっかけを教えてください。
弊社では、SDGsの取り組みの1つとして、2019年5月より「熊谷組スマイルプロジェクト」という、社会貢献活動の仕組みを構築し、運用してきました。これは小さな社会貢献を、より大きな社会貢献に繋げる取り組みで、マッチングギフトの仕組みを応用しています。社会貢献活動に参加した社員数を集計して、年度ごとの累計人数に応じた社会貢献活動費を会社が拠出しています。こども食堂への支援は、このスマイルプロジェクトの支援先として、SDGsのテーマに沿った活動をされている、むすびえさんが採択されたことから始まりました。
私たちは建設業として、地域社会をつくっていくことを大切に考えており、地域の皆様や児童、生徒を対象とした現場見学会や学習支援なども行っています。しかしながら、建設業の通常の事業活動のみでは、なかなか貢献することが難しい分野もあります。こども食堂へのボランティア派遣については、むすびえさんが全国にある各こども食堂の窓口となっているため、社員が安心して伺うことができ、地域の皆様との関係を築ていけると感じました。むすびえさんと共に、より良い地域社会づくりに貢献できればと考えたことが支援のきっかけです。
―― 支援に対しての想いや、実際支援している中で感じていること、具体的なエピソードなどを教えてください。
「こども食堂」と聞くと、子どものための場所のように思われますが、実際に伺ってみると幅広い世代の方がいらっしゃることがわかりました。地域に開かれたコミュニティになっているのですね。ボランティアをすることで、改めて地域コミュニティに参加することの大切さに気づきました。こども食堂でお弁当を詰めたり、食料品を地域の方にお配りしたりイベントに参加すると、とても喜んでいただけます。とりわけ、地域の皆様や子どもたちの笑顔に元気をもらったという社員の声は多いです。
また、フードドライブやBCP用の備蓄品の寄付は食品ロスという社会問題の解決にも繋がっています。バリューブックス株式会社が運営し、社会課題解決に取り組むNPOやNGO団体などに活動資金を送る「charibon(チャリボン)」を通じて、本の寄付による支援も行っています。
社内では、こうした活動報告を社内イントラネットで公開しており、こども食堂のことをよく知らない社員にも活動内容がわかるように工夫しています。また、ネット上の情報だけではなく、「こども食堂を運営する意義やコロナ禍での活動の実態などについて」オンラインセミナー等を実施することによって、社員の意識も高まりつつあります。弊社は全国の支店にもスマイルプロジェクトの窓口担当者がおり、むすびえさんからいただく地域の活動の情報やご紹介などを活かしやすい環境が整っています。
平日の社会貢献活動については、社員が参加しやすいよう、ボランティア休暇制度(特別有給休暇)を導入しています。これらの取り組みの成果として、参加人数も増えてきているところです。
―― 今後こども食堂やむすびえとどのようにかかわっていこうと考えていらっしゃいますか。
現状は地域によって活動に差はありますが、今後もむすびえさんと連携を取りながら、支援活動を活性化していきたいです。そのうえで、寄付金付き自動販売機や子どもたちへの体験プログラムの提供など、支援活動の幅を広げていければと考えています。
弊社は全国に支店はもちろん、作業所も数多くありますが、ボランティア先で社名を伝えても知らない人も多く、ボランティアが会社を知ってもらうよい機会となっています。金沢市のこども食堂をお手伝いしたときには、子どもたちへ手作りのジグソーパズルとクリスマスメッセージカードをプレゼントしたこともありました。建設業なので、デザインや模型作りなど、手先が器用な社員も多いのです。
今後もこども食堂への支援が地域で循環していくようむすびえさんと一緒に活動を進めていきたいと思っています。そして、こども食堂での交流を通して、より多くの地域の皆様や子どもたちを支える人たち、そして次世代を担う子どもたちに、建設業に触れる機会を提供し、ものづくりの面白さや、社会インフラ整備の大切さを伝えていければと思っています。
―― むすびえメンバーより
「熊谷組スマイルプロジェクト」のパートナー団体に選定していただき、既に3年目となりました。当初は、「こども食堂への社員のボランティア参加」をベースに進めておりました。しかしながら、計画を進めている最中にコロナ禍となり、こども食堂の中止や、参加を自粛せざるを得ない状況で、計画を途中で断念せざるを得ない悩ましい日々が続きました。
そんな中でも、各地の地域ネットワーク団体や、ボランティア参加を受け入れてくださったこども食堂の協力のもと、徐々に事例が積み上がっていきました。熊谷組様の社内でも、活動への理解が広まり、賛同者やボランティア参加希望者が増えていると聞いています。一過性のボランティア参加ではなく、継続的な参加へと繋がってきている地域もあります。
また、ボランティア参加のみならず、災害用備蓄品や販促品の物資提供、社内でのフードドライブなど多角的な取り組みも実現してきています。
今後も熊谷組様の社会貢献活動のビジョンと、「こども食堂の支援を通じて、誰も取りこぼさない社会をつくる」というむすびえのビジョンを大切に、各地のこども食堂に喜んでもらえる繋がりづくりを継続していけたらと思っております。