地域のこども食堂や企業など10団体が参加したイベント
── プロジェクトの概要
イオンでは、全国に1万8000カ所ある店舗を買い物の場として提供するだけでなく、各地域で抱えている社会課題やさまざまな問題を解決する場として運営していきたいと考えてきました。2020年、新型コロナウイルスの影響で子どもの食の問題が顕在化し、「次世代を担う子どもたちに豊かで幸せな未来を」という想いはより強くなりました。そこで同年12月、全国各地のこども食堂とネットワークをもつむすびえとパートナーシップを組み、各地域のこども食堂とイオンの店舗を拠点とした支援を行う「イオン こども食堂応援団」 を発足。こども食堂をより広く知ってもらうための啓発活動場所の提供や、募金活動などを行ってきました。活動を通してすべての子どもたちが心身ともに健やかに成長できる未来と、共助の絆で結ばれた地域のコミュニティづくりに取り組んでいます。
今回はイオンのこども食堂にむけた取り組みを全2回に分けてお届けしていきます。1回目は、イオンが取り組む社会貢献プログラム全体の概要と、見えてきた課題について、GX担当責任者兼環境・社会貢献部長の伴井 明子さんと環境・社会貢献部社会貢献担当マネージャーの鶴見 久美子さん、同部 上野 晶子さんにお話を伺いました。
── 社会貢献活動の全体像と、地域社会に向けた支援をすることへの想いについてお聞かせください。
「地域に根差し、地域社会に貢献する」というのはイオンの基本理念であり、各家庭を中心に地域社会が活性化していくことは、私たちにとっても目指すべき姿でもあります。
新型コロナウイルスの影響が、子どもたちにも及んでいることを実感したのは、学校の臨時休校のとき。給食がなくなり、十分な食事の機会が得られていない子どもたちの存在を知ったことが支援のきっかけでした。食の確保が不安定になると、健康への不安や栄養不足などさまざまな問題が引き起こされます。地域の活力ともいえる子どもたちを何とか支えたいという想いのもと、2020年4月、公益財団法人イオンワンパーセントクラブからむすびえさんを通してこども食堂に緊急支援募金を行ったのが、こども食堂支援の始まりでした。全国にネットワークを持っているむすびえさん同様、イオンも「食」と「店舗」において全国展開しているという強みがあります。募金活動をスタートさせた後、この特徴を活かして、金銭的な支援だけでなく子どもたちと子育て世代を応援する取り組みができないかと考えるようになりました。そこで2020年12月に立ち上げたのが「イオン こども食堂応援団」です。
これまでに、お正月におせちを届ける「おせち大作戦!」や、家庭で使いきれなかった消費期限に余裕のある未利用食材を集めてこども食堂にお届けするフードドライブの取り組みのほか、全国の各店舗でお客さまと地域で活動している団体や企業、学校、自治体などをつなぎ、こども食堂の活動を地域全体で応援する体験の場を提供しています。
── さまざまな団体と連携しながら進められているプロジェクトについて、支援をしてみての想いや、実際支援している中で感じていることなどを教えてください。
これまでに「イオン こども食堂応援団」として全国各地で行ってきたイベントでは、地域のこども食堂の紹介パネルを作成して掲示したり、クイズ形式でこども食堂を知ってもらったりする取り組みなどを行ってきました。実際に参加した人からは「近所にそんな食堂があるんだ!」「テレビでは見たことがあったけれど、実際どういうところなんだろう?」などの声があがりました。こども食堂が特定の人だけでなく、誰でも自由に参加できる場所だと知ってもらえたことは一つの大きな成果だと考えています。また高齢のお客さまから「こども食堂に関わるにはどうしたらよいか」という質問を受けることもありました。年齢問わず子どもや子育て世代の力になりたいという方は、地域に潜在的に存在すると実感しています。「イオン こども食堂応援団」の各地でのイベントは、こども食堂の存在を知ってもらうことはもちろん、子どものいない家庭や、すでに子育てを卒業している家庭など、さまざまな年代の方にとって、支援する側としてこども食堂とつながる入り口にもなったのではと考えています。
イベントの開催にあたっては、社会福祉協議会、企業、学校、地域団体などさまざまな団体と連携しながら作り上げてきました。その形は店舗ごとに異なりますが、参加した団体がみな、同じベクトルを向いていたように感じています。「これからの世の中をつくっていく子どもを取りこぼさず支援する」という目標が一致していたからこそ、スムーズに連携がとれたのだと思います。
── むすびえとの協働事業を通じてのご感想や、今後の展望などをお聞かせください。
全国のこども食堂を支援するむすびえさんを通じて、支援を必要とされている方に直接お届けできたことや、その道筋をつくることができたことは、何より大きな成果だと感じています。また、店舗でのイベントでは地域の方にこども食堂の価値や存在意義を伝えることができ、認知向上の一役が担えたのではないかと考えています。
一方、活動して見えてきた課題もあります。地域のこども食堂やフードバンクがボランティア主体で運営されているため、集まったものを届ける物流の問題、食料品を保管する設備の確保、そして慢性的な人材不足といった根本的な問題を抱えているということです。恒常的に子育て世代の支援をしていくには、より踏み込んだ支援が必要になります。イオンとしては、全国に店舗がある特性を活かして、こども食堂開催場所や食料品の保管場所の提供などを視野に入れたインフラ面での協力も検討しています。
また、イオンの従業員の意識向上も課題のひとつだと考えています。これまでフードドライブの実施は各店舗の自発的な動きに任せていましたが、実施していたのは全国で1000店舗にとどまっていました。そこで2024年は10月の食品ロス削減月間にあわせて、11日間のフードドライブを全店舗で実施しました。新しい取り組みはリスクを懸念してなかなか実施に踏み切れないものですが、今回グループ全体で仕組みやきっかけを共有したことで、従業員にとっても意識を持って行動する一歩が踏み出せたのではないかと感じています。各店舗が試行錯誤しながらもお客さまの持ってきてくださった食料品を近くのフードバンクに送り、代わりに感謝を受け取るという体験を通して、何かを感じ、今後の行動につなげてくれたらと思っています。
全国にあるイオンの各店舗が、地域のコミュニティとして子どもたちや各家庭にとって心地の良い居場所になれるよう、今後もむすびえさんと協力しながら支援の輪を広げていきたいと考えています。