2024年9月30日(月)14:00〜16:30、地域ネットワーク団体を対象に、組織運営や基盤づくり、地域の巻き込みなど、日々直面する悩みについて、解決のヒントを考えるオンラインイベント「地域での実践事例から考える!“応援される団体づくり”の壁とカギ」を開催しました。
ゲストは、特定非営利活動法人かごしまこども食堂支援センターたくして 理事長の園田愛美さん。ファシリテーターは、オーセンティックワークス株式会社の古江強さんです。
全国から参加した地域ネットワーク団体の皆さんと共に、園田さんの「たくして」としてのチャレンジの軌跡を伺い、参加者同士の対話により、地域から応援される団体となっていくための“壁”と“カギ”を探求しました。
園田さんからお話しいただいたエピソードと参加者の皆さまの感想から、当日の様子をお伝えします。
エピソード①:みんなの気持ちがまとまらず、講演の時間が15分に…
2016年6月にこども食堂を始めた園田さん。活動を進める中、こども食堂をサポートする団体が必要と、2022年にNPO法人かごしまこども食堂支援センターたくしてを設立。
子ども3人の子育てと小学校教員を両立しながら仲間と活動していたのですが、あるとき、「このままじゃだめだ」と感じる出来事があったといいます。
それは、総会での出来事。団体の頑張っている姿をむすびえの湯浅理事長に見てもらおうと、講演を企画していました。ですが、総会中にメンバーの気持ちや意見がまとまらず、議論が白熱してしまった結果、湯浅さんの講演時間が90分の予定から15分になってしまったそうです。
「いや〜、揉めたねぇ」と湯浅さん。「総会で伝えられたみんなの気持ちもわかるし、みんなの気持ちに応えたいけれど、ヒトもおカネも足りない。それが悔しくて悲しかった」と園田さんは当時を振り返りました。
参加者からは、「それだけみんなの想いがあったからこそ。うちはまだそんなチームになれていないから、いつかそうなれたらいいな」といった感想が寄せられました。
エピソード➁:他県のネットワーク団体との関わりから、少しずつ自分らしい関わり方が見えてきた
そんな「うまくいかない」状況が好転したターニングポイントを古江さんにたずねられると、園田さんは「他県のネットワーク団体の想いと知恵の両方を、地域を越えて分かち合えたこと」と話してくれました。
他県の現場を見せてもらったり、話を聴いたりして、自分が「こんなことができたらいいな」と思うことがあっても、実はネットワークの仲間同士、色や形も全く違うものを見ていることに気がつきました。そこから、ちょっとずつお互いの絵や色、形が見えるようになり、どう動くといいかなど少しずつわかってきました。
他県のネットワーク団体との関わりの中で、相手だけでなく自分自身も良く見えるようになってきた園田さん。「自分の弱さを少しずつ自分で認めて、素直になるのは難しかったが、大事なことだと思えた」そうです。
「自分には何ができるのかな、自分の役割は何かな」と悩むとき「自分の想いを言葉で発信してくれるだけでいいよ」「これがあなたの役割ですよ」と言ってもらい、ほっとして素直になれたと話してくれました。
エピソード③:こども食堂のひろがりと、園田さんの考える「ネットワーク団体の役割」
自分らしい活動の形が見えてくると、徐々にこども食堂に関わる仲間も増え、人間関係が豊かになってきました。一方で、お米や食材などの支援が今まで以上に増えていかないと、一人ひとりの運営者が受けられる支援が少なくなってしまいます。
仲間を増やすからこそ、そのぶん支援も増やすことにも責任感を持ちたいと思った園田さんは、フードドライブに取り組み始めます。
多くの企業の社員の方々が、食材を集めて持って来てくださり、こども食堂さんも取りに来てくれて、「このお米を使って、来週こども食堂しますね!」と言ってくれる。その場でお互い顔を合わせることができたのが良かったと思えたそうです。
企業の方から「支援したいけど、何をしていいかわからない」と言われたときは「会社で、一人一つで良いので、この箱に食材を入れてください」と具体的なアクションを伝えることにしています。また、預かった食材をどんなこども食堂に届けたかを報告したり、お礼状を渡したり、企業さんが「たくして」くれた食材がどのように活用されたかを伝えることが大切で、互いの想いを伝えることもこども食堂ネットワークの役割だと考えています。
忙しい日々の中、「それでも、少しずつできることを持ち寄って頑張ろう!」と、早朝4時から6時までの時間で定期的に打ち合せをしていたこともあると笑顔で話す園田さん。
それを企業さんに伝えるといつも驚かれ、「自分たちも何か手伝うよ」と、協力を申し出てくださるそうです。
以前は「食材を受け取るのは作業」と考えていた部分があったそうですが、定期的にメンバー同士が集まることで、悩み相談の場になるなど、仲間意識が生まれたとのこと。「大変だったが、絆も深まり、鹿児島県内のこども食堂同士の関係性の柱になっている」と話されていました。
「ストーリーテリング」ワークショップで共有された参加者の皆さまの感想
今回のイベントは、ゲストのストーリーを聴く時間と、小グループでの感想共有を交互に行う「ストーリーテリング」という手法を用いて行いました。
参加者の皆さんからの感想の一部をご紹介します。
「園田さんの価値観、考え方、物事の見方」について
- 助けを求める。自分も人に頼るのが苦手で共感した
- 代表ならではの強い想いと、自分がやらなくてはと孤独の戦いだ
- 頑固な面があるな、でも、突破してきたことはすごい
- 恩送りしたいという利他の想いが、接する人たち一人ひとりに伝わっている
「応援の輪が広がるためのカギ」について
- 関わる人たちの分かち合い
- 自分の気持ちの見える化と周りの人の気持ちの見える化
- 朝4時から6時でミーティングできる熱意
- 自分や仲間の想いをお互いに伝え合ったり感じようとしたりすることが大切
クロージング
会の結びに園田さんから、「皆さんからいただいた言葉は、自分自身が気づかなかったことの見える化になったり、価値づけてくださったりしました。この場に感謝します。仲間感のある場だったので安心して自分の弱さを語れました」との感想をいただきました。
ファシリテーターの古江さんは「チャットを含め色々な価値を皆さんが共有し、皆さんがくれた一つひとつの言葉が大事なキーワードで、応援が増えていくカギだなと感じております」と締めくくり、温かい2時間半が終了しました。
素敵なストーリーを提供くださった園田さん、素敵な場をファシリテートしてくださった古江さん、参加してくださった皆さん、ありがとうございました。これからもこのように、想いを語り合える場をつくっていきたいと考えております。