わたしの遺贈寄付ジャーニー
幼少期に寂しい思いをした原体験が、遺贈寄付を考えるきっかけになったという関根旺史(せきねあきふみ)様。その想いを、むすびえ理事長の湯浅誠が伺いました。
湯浅(左)と関根様
湯浅 本日はありがとうございます。まず、遺贈寄付に興味を持たれたきっかけを教えていただけますか。
関根様 私は80歳になりました(2024年時点)。相続させる相手はおりませんので、いくばくかのものをどう後世に残すか、それは私個人が自由に決められる状況にあります。なぜ遺贈寄付に興味を持ったか、それを思い返すと私自身の人生に大きく関係しているように思います。両親は、私が幼いときに離婚しました。私が3歳ぐらいだったときに別居したそうです。当初、私と妹は母親の実家に身を寄せ、その後、東京・神田の小学校に通っていました。おふくろとずっと一緒にいたかったのですが、ある日、状況が一変します。
湯浅 どんなことが起こったのでしょうか?
関根様 80歳になった今でも鮮明に覚えているのですが、おふくろが「映画を見に行こう」って、映画館に連れて行ってくれて。ディズニーの「バンビ」という映画でした。私は座って夢中で映画を見ていたのですが、気がついたらいつの間にかおふくろがいなくなっていたのです。
湯浅 え?
関根様 それで、母が座っていた席とは反対側の隣席に座っていた、知らないおじさんが手をとって「さあ帰るぞ」ってね。その人が、実は親父だったのですが、幼い頃に離れてから会っていませんでしたから、そのときの私にとっては、もう「知らないおじさん」なんです。もうね、小学2年生だったけれど、泣いて、泣いて。そこからタクシーで家に着くまでずっと泣いていました。
湯浅 だって隣は知らないおじさんなんですものね。
関根様 はい。もうおっかなくてね。そんなことがあって、親父の家に引き取られたのですが、いつまでたっても馴染めなかったですね。当時、親父は再婚して、再婚相手との間に子どもが生まれておりましてね。だから、新しい家に自分の居場所っていうのはないように感じていました。小学校も、神田から郊外に転校しました。
湯浅 学校も変わって。それはつらかったですね。
関根様 そうですね。子どものとき、特に小学校時代は本当につらかったです。
関根様(手前)と語り合う湯浅(右奥)
湯浅 関根さんとは異なりますが、私にも理解できる部分があります。うちは兄に障がいがあったので、両親の注意はどうしても兄の方に向きがちで、私にはあまり構われた記憶がありません。ただ、兄のためにボランティアさんがうちに来てくれていまして、兄だけじゃなくて私も一緒によく遊んでくれて。そういうボランティアさんがしょっちゅう家の中にいたので、自分にも居場所があったという感じがしていました。関根さんにとって、そんな場所はありましたか?
関根様 そうですね。親父は工場を経営していたのですが、当時工場長をしていたご一家が、私にとってはそんな存在でした。そのご一家はすぐ近くに住んでいて、そこの奥さんが気がいい人で、大変お世話になりました。ただ、若いときにお世話になったのに、その後、ろくに恩返しが出来なかった。今となっては、その方々はもうこの世にはいらっしゃらないので、後悔が残っています。
湯浅 でも今、まさにそれを遺贈寄付という形でアクションを起こされることで「恩送り」していらっしゃるのではないでしょうか。こども食堂には、なぜ関心を持たれたのですか。
関根様 子どもの支援をしている団体はたくさんあって、本当にすごい方々がいらっしゃいます。そんななかで、私もどんな形で寄付をするのがよいかいろいろ検討しましたが、最終的には、私はこども食堂への支援に絞ることにしました。日本では1980年代に労働者派遣法が施行されて以降、正社員から派遣労働者への置き換えが進んで格差がどんどん広がっています。私は、それをなんとかしたいという思いがあったのです。湯浅さんのような方が発言してくださっていたのも印象に残りました。
関根様(左)に、感謝状を渡す湯浅
湯浅 それはありがとうございます。関根さんは、遺贈寄付をしようと遺言書を書いていただく前から、毎月むすびえに寄付をしてくださっていたそうですね。
関根様 はい。1年で辞めてしまって、些少ですが。
湯浅 とんでもないです。本当にありがとうございます。今回、遺言書を書いていただくのに当たって、さまざまなご苦労もあったのではないでしょうか。
関根様 遺言書の準備は、自分でやろうと思っていたのですが、むすびえから行政書士の方を紹介していただき、段取りよく進みました。いつかは自分でやらなければならないことだったので、おかげさまで一段落したことに安堵しています。
湯浅 最後に、こども食堂へメッセージをお願いします。
関根様 私は、これからこども食堂の価値は、ますます上がると思います。それぞれの場所で、子どものためにがんばっている方々が多くいらっしゃり、それによって助かっている人もまた多くいらっしゃると思う。炊き出しのような感じで、子どもたちがみんな集まってきて、子どもも親も何も気にしないで参加できる、そんな場所が増えていくことを祈っています。
湯浅 私たちとしても関根さんのように寄付をしてくださる方々がいらっしゃって、その人たちのおかげで、現場が回っていることを子どもたちにも知ってほしい、伝えていきたいという気持ちがあります。本日はありがとうございました。
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