こども食堂を通じて、誰もとりこぼさない社会づくりを目指している「NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ(以下、むすびえ)」(理事長:湯浅誠、社会活動家・東京大学特任教授)は、2018年4月に発表した箇所数調査から約1年、各地域ネットワーク等と共に最新の調査結果をまとめた。その結果、全国のこども食堂は3,700箇所を超えていることがわかった。過去最高の増加ペースである。
調査は、全国に広がるこども食堂の地域ごとのネットワーク組織や自治体等に問い合わせるなどして集計し、こども食堂の定義は、それぞれの組織の定義にしたがった。
地域共生社会のインフラに近づく
むすびえは、こども食堂が全国のどこにでもあり、みんなが安心して行ける場所となるよう環境を整えることを目的としており、将来的には、全小学校区(現在19,892校。文科省「学校基本調査」より)に対して1つ以上のこども食堂がある状態を目指している。今回は、小学校数に対するこども食堂数の比率を都道府県別に「充足率」として算出し、箇所数と併せて発表する。
全都道府県で増加し、少なくとも3,718箇所に。すべての子や地域住民がアクセスできる地域共生社会のインフラにまた一歩近づく。
もっとも箇所数が多いのは、東京都(488箇所)、次いで大阪府(336)、神奈川県(253)。上位3都府県は2018年と変わらず。逆に、もっとも箇所数が少ないのは、秋田県(11)、富山県(15)、山梨県(16)。
全国の箇所数は、昨年調査(2,286)に比して1,432増。その前2年の増加ペース(2年で1,867)を上回った。
また、小学校区に対するこども食堂の充足率は、沖縄県(60.5%)、次いで滋賀県(52.5%)、鳥取県(35.2%)が上位となった。一方、充足率が低いのは、秋田県(5.5%)、青森県(5.6%)、長崎県(7.0%)であった。充足率50%超が2県。25%超が6都府県(東京、鳥取、神奈川、京都、大阪、高知)となり、10%超が上記8都府県含めて36都道府県。2018年段階で10県あった5%未満は0に解消した。
居場所による支援が前向きな変化を
居場所による支援は、子どもの学習理解度や対人関係、自己効力感などに効果があり、保護者と子どもの関係においても前向きな変化が見られる
充足率のもっとも高かった沖縄県の子ども未来政策課長下地常夫氏は、箇所数調査の結果を受けて、次のようにコメントした。
平成27年度に沖縄県が実施した子どもの貧困実態調査により、子どもの貧困率が29.9%と全国の約1.8倍であることが明らかとなり、全国に比べ特に深刻な子どもの貧困状態に対応するため、平成28年度に内閣府が「沖縄子供の貧困緊急対策事業」を創設しました。
これまで同事業を活用し、県内26市町村、134箇所に居場所が設置(平成30年10月1日現在)されるなど、居場所の整備が急速に進んでおります。
しかし、県内41市町村中、居場所が設置されているのは26市町村となっており、県内全小学校区の約7割では居場所が未整備となっているなど、課題もあります。
このため、沖縄県では、今後も居場所の設置を図っていく必要があると考えており、今年度より、居場所開設にかかる講座の実施や開設に必要な経費を補助する事業を開始するほか、居場所のネットワーク組織を設立し、居場所同士の情報交換や企業等からの支援受入などの中間支援を行うこととしております。
居場所による支援は、子どもの学習理解度や対人関係、自己効力感などに効果があり、保護者と子どもの関係においても前向きな変化が見られることが明らかになっていますので、引き続き、居場所支援を継続してまいりたいと考えております。
(沖縄県の子ども未来政策課長下地常夫氏)
今回の調査で、こども食堂はすでに6小学校に1箇所の割合で存在しており、子どもの健全な育ちのため、また共生社会のためのインフラとなりつつあることが明らかとなったが、依然として「貧困家庭の子どもを集めて食事させるところ」との誤解が消えない。そこで下記プロジェクトも実施する。
東京おもちゃ美術館×むすびえ 「食べる・遊ぶ・笑うこども食堂」を全国47都道府県で開催
こども食堂の認知は約7割程度としながらも、実際にこども食堂に行ったことのある人は1割に満たないことが、朝日小学生新聞(2018年)及びインテージリサーチ(2019年)の調査で明らかになっている。そこで、「こども食堂に一度行ってみよう」という空気づくりとして、本プロジェクトを企画した。約3年かけて全国で実施する予定である。
こども食堂が、地域の理解を得ながら継続的に運営され、多世代交流の地域の居場所として定着し、さらにはすべての子どもがこども食堂につながるようにするため、さらには地域コミュニティが希薄になる中、地域住民同士のつながりが生み出される場になることも狙いとしている。東京おもちゃ美術館からは地域のおもちゃコンサルタントがこども食堂に派遣される。
子どもから高齢者まで地域住民439人が集まった「食べる・遊ぶ・笑うこども食堂@みんにゃ食堂(山口・宇部)」
全国展開に先がけ、6月19日に、山口県宇部市で2017年から西法寺で開催しているこども食堂「みんにゃ食堂」にて本企画が実施された。
当日は、木育を推進する体験型ミュージアム「長門おもちゃ美術館」(長門市仙崎)からおもちゃの専門家「おもちゃコンサルタント」が参加し、子どもたちと昔ながらのおもちゃ遊びを楽しんだ。一方、吉本興業からの特別協力を得て、お笑い芸人の「バンビーノ」さん、山口県に在住するよしもと住みます芸人の「どさけん」さんが参加し、ボランティアが作った食事を一緒に食べ、ボードゲームや積み木をつかった対戦遊びで盛り上がり、会場には子どもたちの笑顔が溢れた。
また、宇部市のマスコットキャラクターである「チョーコクくん」もSDGsのロゴを身につけ、特別参加。地域の「お祭り」のようなこども食堂の盛り上げに一躍をかった。
みんにゃ食堂運営母体の一つ、子育て支援施設「かねこキッズクラブ」(金子小児科)の金子淳子院長は「こども食堂を始めて2年になります。この企画を通じて、コミュニティー外の企業や団体との連携が生まれ、新しい広がりにつながることを期待しています。また、これから全国でこの企画が実施されることを嬉しく思います。」と話す。
初年度は、みんにゃ食堂に続いて、秋田たすけあいネットあゆむ こども食堂(秋田県)、ふくろうハウス(東京都)、祥徳寺子ども食堂(鹿児島県)等での開催を予定している。詳細は、随時むすびえのHPに掲載する。
【こども食堂とは】
こども食堂は、一般に「子どもが一人でも行ける無料または低額の食堂」と定義されているが、公的な定義は存在しない。実態としても、その態様はきわめて多様である。名称も「地域食堂」「みんな食堂」「○○の家」など、必ずしも「こども食堂」という名称を冠しているとは限らない。参加者層も子どものみの場所から、親子参加を認めるところ、地域住民も自由に参加できるところなど、様々である(もっとも多いのは最後の「誰もが自由に参加できる地域交流拠点」)。
こども食堂について詳しくはこちら
よって今回の箇所数調査では、何を「こども食堂」に含めるかは各自治体の申告に拠った。そのため、たとえば「食事も出している学習支援教室」が「こども食堂」にカウントされている自治体とカウントされていない自治体がありえる。また、夏休み等の長期休暇のみに開催されるこども食堂をカウントするかどうかも、判断がわかれた可能性がある。
【NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえについて】
「こども食堂の支援を通じて、誰も取りこぼさない社会をつくる。」というビジョンを掲げ、2018年12月に設立された団体(理事長 湯浅誠)。こども食堂が全国のどこにでもあり、みんなが安心して行ける場所となるよう環境を整える他、こども食堂を通じて、多くの人たちが未来をつくる社会活動に参加できるよう活動している。
活動は、個人や企業等からの寄付で行なっている。
むすびえへの支援についてはこちら
【添付資料・プレスキット】
190626第一部:ポイント
190626第二部:箇所数・充足率データ
190615第二部:調査主体・出所・市区町村別内訳
190615第三部:諸注意・意義、若干の考察
190615第四部:現場の受け止め
*プレスキットは、7/2に本サイトより削除いたしました。画像データなどのご相談は、下記に、お問い合わせください。
【本件問い合わせ先】
NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
https://musubie.org/
理事長 湯浅誠(社会活動家・東京大学特任教授)
連絡先:三島理恵
Email:kodomo@musubie.org / 電話:03-4213-4295