2023年版「共働き子育てしやすい街ランキング」で1位に選ばれた松戸市。
子ども支援や子育て支援をしている市内の団体が協働し、子どもの権利条例の制定を視野に入れた「“こどもにやさしいまち、まつど”キャンペーン」を進めています。
そんな松戸市で、子どもが安心安全に過ごせる居場所づくりを考える研修会が開催されました。
上の写真は、大人と子どもの役に分かれて行われたロールプレイの様子です。
「子どもの気持ちになってみるとどうですか?」と講師が問いかけると、
「大人役の人が寄り添ってくれて、もっと話したくなりました」との感想が聞かれました。
こども食堂や居場所を運営する皆さんが「自分のふるまいは子どもにどう見えていたのかな?」と、これまでの取り組みを振り返る機会になったようです。
「私たちの地域でも、こうした研修を開催してみたい」
そんなご要望がありましたら、
ibashonoanzen@musubie.orgまで、ぜひご連絡ください!
※研修実施サポート費用およびファシリテーター料金(外部講師の場合含む)は、むすびえにて負担いたします。
<概要>
テーマ:安心安全なこどもまんなかのこども食堂/居場所とは
日 時:2023年11月29日(水)13:30~16:30
会 場:まつど市民活動サポートセンター(千葉県松戸市)
主 催:NPO法人Matsudo子どもの未来へwith us
※「“こどもにやさしいまち、まつど”キャンペーン」参加イベント
協 力:認定NPO法人ACE、認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
講 師:認定NPO法人ACE 成田由香子さん、田柳優子さん
参加者:こども食堂や居場所の運営者およびスタッフなど約40名
<内容>
■子どもとの関り、これでいいのかな?~運営者同士で悩みを共有
こども食堂の現場では、参加者やスタッフの笑顔が日々あふれています。しかし、時には子どもたちとの関わりの中で、すこしモヤモヤした思いを持つ人もいます。NPO法人Matsudo子どもの未来へwith us代表理事の髙橋亮さんが、ご自身が運営するこども食堂での事例を紹介してくださいました。
私たちのこども食堂では、子どもが男性ボランティアに対して、だっこや肩車などのボディータッチを求めて来た時にどのように接したらよいか悩み、スタッフ同士で話し合いの機会を持ちました。その結果、一概に「ダメ!」というわけにはいかないけれど、だっこなどの過度な接触は避け、握手をするなど別の関わり方に変えていくことにしました。しかしスタッフへの独占欲を強く持つ子もいて、そうした子どもの心を満たすような対応を引き続き考えています。
この事例を聞いていた参加者の多くが、大きくうなずきます。どうやら他のこども食堂や居場所でも同じような悩みがあるようです。そこで次のワークでは、現場で感じる安心安全ではない、人との関わり方や接し方をグループで出し合いました。
スタッフと子どもの間に起こったことだけでなく、子ども同士のトラブルや、保護者の子どもへの接し方などにも話は広がり、それぞれのこども食堂や居場所での対応事例もグループ内で共有されました。
また、大人は良かれと思って行ったことが、子どもにとっては望んでいないものだったり、かえって子どもを傷つけてしまったりする場合についても話し合いました。
こうした課題を解決する取り組みのひとつとして、講師から子どものセーフガーディングが紹介されました。子どもの安心安全を守るためにできることを文章にまとめ、スタッフ同士の共通ルールとすることで、子どもだけでなく大人にとっても、安心安全に活動することができるといいます。
資料:「子どもとおとなにとって安心安全な組織・活動づくりのためのルール(見本)」(提供:認定NPO法人ACE)
■子どもから相談を受けた時に心がけたいこと・気をつけたいこと
こども食堂や居場所の活動の中で子どもが心配ごとを抱えていた場合、大人である私たちには何ができるのでしょうか。冒頭でご紹介したロールプレイでは、子どもから相談を受けた時に、どのような心構えやふるまいが必要なのかを体験しました。
【ロールプレイの流れ】
- ペアになり、子ども役と大人役に分かれる。
- 子ども役は、こども食堂を利用している小学校3年生という設定。「状況シート(子ども)」にある3つのシーンのうち、いずれか1つを選んで、大人役に相談しようとする。どのシーンを選んだかは、大人役に伝えない。
- 大人役は、こども食堂に関わる運営者/スタッフという設定。「状況シート(おとな)」にあるパターン1、2の順で、子ども役に接する。
ロールプレイで使用した資料。子ども役(上)と大人役(下)それぞれに配付して行います。
※こども食堂や居場所のスタッフ同士で簡単に行えるワークです。画像をクリックすると資料をダウンロードできます(提供:認定NPO法人ACE)。
こども食堂や居場所では、常に子どもに寄り添った活動をされています。しかし、ロールプレイで子どもの立場に立ってみると、大人の接し方によって子どもの受け止め方がどのように変わるのか、話しやすさが変わるのかについて、新たな気づきがあったようです。
さらに、安心安全に関することで、子どもから不安な気持ちを打ち明けられた時の大人の対応として、次のようなポイントが紹介されました。
【心がけたいこと】~こんな対応ができますように~
- 注意深く、落ちついて聴く(子どもの言葉・ペースで話してもらう。応答は、短く、やさしく、中立的に)
- 子どもの言うことを真剣に受け止める
- 話を受けて、次に自分が何をするのかを説明する(ある程度の年齢であれば、子ども自身も解決したいと思って相談しているため、大人側が「○○したいと思うけれどいい?」など合意を得ながら話をすると、子どもも先の見通しが立つ)
- できる限り子どもをサポートする(子どもが安心安全を感じられるようにする)
【気を付けたいこと】~以下のような対応はしないようにしましょう~
- パニックになる(「えー!そんなことがあったの?!」などと慌てた態度を見せると、子どもは「大変なことを言ってしまった」と感じて話しにくくなる)
- 子どもが自由に話すのを止める
- 情報を強引に引き出そうとする(内容によっては子どものトラウマを引き出してしまう可能性がある。ファーストコンタクトではすべて聞き出さなくてよい)
- 秘密にすると約束する(子どもの安心安全に関わることは、他の大人にも相談する必要がある。話してはいけない人を特定しつつ「この人には相談するよ」と子どもに伝える)
- 子どもの話を疑って運営者に報告しない
- 疑われている人に話す(「あなた、○○ちゃんにこんなことをしたの?」などと言うと、本人が事実を隠すなど状況確認が難しくなる)
加えて、子どもの安心安全に関する相談があった際に、誰に報告しどのように対応するのかなど、子どもを守るための体制づくりを、普段からスタッフ同士で話し合っておくことが大切だというお話がありました。
<参加者からの声>
- 子どもの安心安全を守るための心構えを、スタッフ一同と共有したいと思った。
- まず運営事務局が共通認識として勉強していきたいです。こども食堂の決まり・ルールは今までひとつも具体的になかったので、これから考えます。
- こども食堂や居場所だけでなく、子育て支援に関わるスタッフが心得として持つべき内容でした。
最後に、髙橋さんからの感想をご紹介します。
「ルールというと、なんだか堅苦しいものとか、縛られる印象を持つ方がいるかもしれません。けれど、こども食堂や居場所で大切にしたいことは、“あたたかなセーフガーディング”なんですよね。みんなにとって居心地よく、安心安全に過ごせる場をつくるためにどんなことを大事にしたいのか、大人と子どもが一緒になって話し合うところから始めてみたいと思いました。まさに“こどもまんなか”を実践する第一歩です」
研修会を実施してみたいという地域ネットワーク団体およびこども食堂運営者の皆さまは、ぜひ以下よりお問い合わせください。
ibashonoanzen@musubie.org(担当:鈴木・出原・光田・森谷)