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【レポート②】コロナ禍でのこども食堂 〜香川県編〜

新型コロナウイルス感染症が、5月8日に感染症法上で5類に分類されることになりました。

今まで会食を制限してきたこども食堂も多くある中、香川県ではいち早く意欲的に会食形式で活動されているこども食堂があるという情報をお聞きしたので、香川県社会福祉協議会のご協力のもと2箇所のこども食堂を取材させていただきました。

具体的な活動のご様子や、コロナ禍における会食のご苦労など、これから会食を開始、あるいは再開についてご検討中のこども食堂のみなさんにも参考になるお話を伺うことができました。


①<
ゆうゆう食堂> NPO法人ゆうゆうクラブ(https://yuuyuu.ciao.jp/

②<みんなの広場koko> NPO法人ミュージックサポートネットワークぱぴぷぺぽ                 (https://www.instagram.com/minnanohiroba_koko/?hl=ja

🔳コロナ禍での活動経緯(初期)
コロナ禍初期、緊急事態宣言が発令するなど、人が一堂に集まるということが難しくなった時期もあったと思いますが、その頃の活動や状況の変化などを教えてください

ゆうゆう食堂 田中さん>
コロナ禍の初期は、香川県ではまだ穏やかな空気が漂っていましたので、突然学校が休みになってしまった子どもたちの為に、こども食堂として何ができるのかと考えた結果、無料の給食支援を開始しました。
毎日子どもを集め、バイキングスタイルで賑やかに食事をするなど「学校が休みだからできる」夢のような時間を過ごしていたのです。
ただ、日本でも感染者が増え始めだんだんとコロナ感染症によって人が亡くなった…等のニュースがあったり、感染症のフェーズも上がっていったので、このまま会食をやっていていいのかという不安に追い込まれていきました。
バイキングはやめようとか、壁に向いて食べようとか。
考えられる対策を実施してはいましたが、全国的に会食をやってないのに自分たちだけやっていていいのかという不安からだんだん心がパンク状態になってきて、いったん中断したり考えを重ねる時間をとることにしました。結果としては月1回の夜の会食と、学校が休みの子どもたち限定で昼の活動も継続することにしました。
初めは普通にその場で食べていたのですが、だんだんフェーズが上がっていったので「持って帰って食べる?」というような声かけをするようになり、自然と持って帰る人が増えていきました。
ただ会食の場を完全にクローズしたわけではなく、「食べたい人は食べていいよ。でも気をつけてね。」という気持ちをお互いに共有しながら進めることにしました。
ただ、参加者の方の感覚は割とコロナ前と同じで、あまり気にしていなかったことが逆に怖かったし、どちらかといえば運営側の不安の方が大きく、近所の人から苦情が来ないかとかビクビクして怯えていました。

みんなの広場koko 大喜多さん>
私たちは元々は音楽関係の団体で、音楽イベントの後みんなで食事をしていたのが活動の原点です。
コロナ禍、音楽イベントのような活動は一切中止となりましたが、食事の部分だけは残し「こども食堂」として会食をしています。
初期の頃は、学校が休校になったので学習会(宿題会)を開催し、無料の食事を提供していました。食べる際は「食事は黙って食べようね」などと声をかけるようにしました。
食事が終わったら外に出て「コロナに負けるな」という思いで子どもとたちと外遊びをしていました。場所がすごく田舎なので環境面ではとても恵まれていると思います。
しかし2020年夏くらいから全国的な風潮として集まることを躊躇し始めていたのですが、保護者の方たちから「ここ閉められたらどこも行くところがない。お願いだから閉めないで。」という声が上がり、継続を決意しました。
ピクニック気分で外にテントを張って「お弁当持って帰ってもいいよ。でもここで食べてもいいよ」というスタンスで。
やはり「ここを閉められたら行くところがない」という保護者の方たちの切実な言葉が後押しになって、強気で続けられたのだと思います。

🔳ピークの様子と会食を継続できた理由
「ゆうゆう食堂」さんも「みんなの広場koko」さんも、コロナのフェーズが変わり、香川もいよいよ感染者が増えてきたという状況下でも会食を継続できた背景を教えてください

ゆうゆう食堂 田中さん>
地区に陽性者が一人出れば、その情報がすぐに広まってしまうような環境下ですので、たまたまこども食堂の開催日に陽性者が出たという情報が入った時は震えながら準備しました。
急遽「のぼり」の足と棒を利用して、ビニールシートでテーブルを1つづつ囲んだりして。
そんな最中、学校の先生がこども食堂にやってきたのです。
食事している子どもたちは、「わ!先生久しぶり」とビニールシートの中から顔を覗かせたり、先生も「お前ら元気か?」と声を掛けたりしながらお互いが久しぶりに対面して喜び合う姿を見ていると自分たちのやっていることは間違っていないと思えたのです。
それは、「この日常を取り戻そうとして最大限の工夫と努力をした結果、感染したのなら仕方がない」と腹をくくった日でもありました。

ー腹をくくったから継続できたー 継続できた理由はそこにあったと思います。

ただ、続けていくには課題もあります。
うちは会食とテイクアウトを両方やっているのですが、テイクアウトは数がどんどん増えていくんです。一時は、その家族の構成もわからないまま(子が何人の家族なのかとか)車でお弁当を取りに来た人に言われる数だけ渡したりしていたこともあり、「このままで本当にいいのか?」と悩むこともありました。それも今は乗り越え、現在はSNSでお知らせをする際「テイクアウトは一律大人料金と明言しています。
(会食時の料金 :大人400円 こども 200円)
私たち運営側は、本来こども食堂は寛容である事が大切と思っているので、いろんな工夫をしながら、気持ちに折り合いをつけながら活動しています。

みんなの広場koko 大喜多さん>
全国的に感染が激増した時も集まることを止めてしまうことはなかったです。

ーコロナにしろインフルエンザにしろ、感染症にかからない体づくりをやりたいー

私自身もそう思っていましたし、スタッフも「コロナに負けない強い体とココロを作ろう」というのコンセプトのもと、「会食やろうよ」という気持ちでみんな一つになっていたと思います。
継続できた背景に、田舎なので密にならない環境があったのは大きかったと思います。
行政の後押しやバックアップをしてくれる方もいたので、周囲の目を気にするということはあまりありませんでした。
感染症対策として、参加者が室内に入る時や外遊びから帰って来た時は、まず手洗いうがいを徹底するようにしました。
外に手洗い場を設置したり施設内にも手洗場いを増設するなどの対策もとりました。
それが習慣化し、現在も室内に入る時には、必ず手洗いうがいをすることが当たり前の行動になっており、その点はすごく良かったと思います。

🔳今後はどうする?
今後5月8日以降、コロナは感染症法上の分類が5類に変更されると決定していますが、それを踏まえて今後やってみたいことがあれば教えてください

ゆうゆう食堂 田中さん>
コロナ前から地域の方にも「子どもが安心して来ることができる居場所」として認識してもらっていると思っていますし、そのスタンスを維持しながらこれからも変わらず活動していくのだと思います。
こうやってこの場所を守っていくにはボランティアやスタッフの意識の共有はすごく大事だと思っていて、誰かが「怖いからやめよう」っていったらできなかったと思います。
みんなの心が一つになって「やろう」といっていたから気持ちが前向きになってやることができました。
しかし会食を再開するにあたっては「ワンチーム」という考え方に固執するとすごく難しくなると思います。
「やる人はやるがやりたくない人はやらない」というその人の意思を尊重する姿勢もすごく大事だと思います。
もともと会食形式をやっていた人はその場の重要さを知っているので「自分の意思で選び、覚悟のある人がやる」という決め方も一つだと思います。

みんなの広場koko 大喜多さん>
現在は、会食形式とお弁当の持ち帰り、両方のパターンで活動していますが、2023年4月からはお弁当の持ち帰りをやめて会食だけにしようと考えています。
理由は、安くて美味しいものが食べられるという評判が広がりお弁当の数がどんどん増えてしまったことにあります。
「これだけ」って数を決めていても、来ることができない方がおばあちゃんだったりすると、やっぱりかわいそうだからといってお弁当の数を増やしたりしてしまうからです。
この現状は困った状態なので会食という形に戻し、子ども達が一緒に食事づくりや片付けを手伝いながら「みんなで作ってみんなで食べよう」という場所にしていこうと思います。
それはスタッフ始め、参加者の皆さんにもすでに理解していただいています。

🔳会食に関する県内の状況
香川県ではいち早く意欲的に会食形式で活動されているこども食堂さんが多いという印象があるのですが、今の県内の状況を教えてください

香川県社会福祉協議会 福田さん
去年くらいからはお二方と同じように「腹をくくって」活動し始めた方が多いのかなと感じています。
実際に会食を実施する団体も増えてきて、2021年の12月くらいの調査の時には47%くらいの食堂が実際に会食していましたが、1年後の2022年12月では、58%くらいの団体が会食をされているといった状況になってきています。徐々に新型コロナウイルス感染症に配慮した上で運営ができるようになり、最大限の対策を取りながら、できる限りの活動を続けて行こうと頑張っていらっしゃるのだと思います。

🔳ネットワークとしてこども食堂への働きかけ(支援)
今後、県社協としてどのようにこども食堂の活動を応援していきたいですか

香川県社会福祉協議会 福田さん
県内では少しずつ市町圏域のネットワークもできています。そのような中、香川県社協は皆さんがやりたい事の多様性を認め、それぞれの団体が大事にされていることに寄り添いながら応援したいと考えています。

🔳会食に関してこども食堂に伝えたいメッセージ
最後にこれから会食を開始、あるいは再開に向けてご検討中のこども食堂の皆さんへ、メッセージをお願いします

ゆうゆう食堂 田中さん>
こども食堂は、その場を通じてそこに集まる人と人を結ぶという役割をしていると思っています。
そこに集まる人に寄り添えるような場を開くという意味で、自分のところは配食がいいのか、何がいいのかというのを改めて考えていけばいいと思います。
「腹をくくるところはくくり、頼れるものは頼る」という考えも大切だと思います。
絶対に上を向いている必要はなく、下を向いて這いながらでも前には進めると思っていますので、こども食堂という「必要とされている活動」に向き合っていきましょう。

みんなの広場koko 大喜多さん>
私たちは田舎という利点や、こども食堂に併設した居場所、公園があるという強みを活かして割と自由に活動することができています。
それぞれの置かれた地域で、自分のこども食堂の強みみたいなものをどんどん表に出しながら活動できればいいのではと思います。

 

お忙しい中、インタビューにご協力いただきありがとうございました!

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