2025年1月18日(土)に沖縄県宜野湾市「宜野湾ベイサイド情報センター(Gwave)」にて、全国横断シリーズ第3弾「こども食堂オープンデータ アイデアソン@沖縄」を開催しました。
当日の概要はこちら:https://musubie.org/news/10788/
当日の様子
①インプットトーク→課題の共有
まずはむすびえ長井から「こども食堂について」、沖縄県庁奥平さまより「沖縄県の現状について」、アイパブリッシングの福島健一郎さまから「オープンデータについて」、インプットトークを行いました。
事前知識を学んだ後、こども食堂に関わる課題を出し合いました。
参加者の内、およそ半数はこども食堂関係者が参加されており、現場の様々な課題感が浮き彫りになりました。
②アイデアソンの実施
興味のあるテーマごとに分かれ、アイデアソンで課題解決のためアイデアを出し合いました!
当日提案されたアイデアのご紹介
①食材の過不足を解消する「ユイマール・センター」
◾️ 現状と課題
こども食堂では日々の活動の中で食材を必要としているものの、実態としては個別のこども食堂ごとに食材を調達しており、「今すぐ提供したい」企業や団体が一括して寄付できるような仕組みや窓口がないのが課題となっている。
食品ロス削減の観点からも、消費・賞味期限の迫った食品をリアルタイムに必要な場所へ届ける仕組みが求められているが、現在、そのような仕組みやそれを担う団体は存在しない。
また、寄付する側にとって、どこに・どのように提供すればよいのか分かりづらく、手間がかかることも障壁となっている。
個々のこども食堂は日々の運営に追われ、迅速な食材管理や物流の調整が困難な状況にある。
◾️ アイデア:「ユイマール・センター」
こども食堂専用のクローズドECサイトを開設し、食材の過不足を解消する仕組みを構築する。
◾️こども食堂側のメリット
こども食堂に新入荷情報が自動で通知され、必要な量を無料で申し込めるため、必要な食材を適切なタイミングで確保できる。
◾️企業側のメリット
企業はECサイトを運営する「ユイマール・センター」に食品や物資を寄付することで、煩雑な手続きなしに、確実に必要とするこども食堂へ届けることが可能。食品ロス削減にも貢献できる。
・物流の仕組み
配送には、低コスト(1回300円)で利用できるUberのデリバリーサービスを活用し、迅速かつ効率的に届ける。
・運営資金の確保
サイト運営費は寄付や助成金でまかない、持続可能な運営を目指す。
この仕組みにより、こども食堂の食材不足を解消し、食品ロスを削減するとともに、寄付側の負担を軽減し、より多くの支援が行き届く仕組みを実現する。
②こども食堂への支援を可視化する「エミタル」
◾️ 現状と課題
こども食堂を支援したいと考える企業はあるものの、支援の成果が見えにくく、支援の意義やメリットを実感しづらい。
また、多くの企業はそもそもこども食堂の存在や支援の必要性を知らず、関心を持つきっかけが少ない。
この結果、企業による支援が限定的になり、こども食堂側に十分な支援が届かない状況が続いている。
◾️ アイデア:「私たちが支えています」アプリ 「エミタル」
企業のこども食堂支援を可視化し、支援の輪を広げるアプリ「エミタル」を開発する。
◾️ エミタルの仕組み
企業がこども食堂へ物資・資金・サービスなどにより寄付を実施した際に、その内容をエミタルに登録。
こども食堂側が支援情報の登録を承認すると、マップ上で「この企業が支援しています」と可視化される。
更に支援を受けたこども食堂がコメントを添えることで、企業の貢献度が伝わりやすくなる。
インフルエンサー・行政・TikToker などがアプリを通じて支援事例を発信しやすくなり、より多くの企業や個人への周知が期待される。
◾️ エミタルのメリット
・企業の社会貢献が「見える化」され、企業が支援の意義を実感しやすい
・こども食堂は感謝を直接伝えられ、支援者とつながる機会が増える
・支援の輪が広がり、新たな企業が参画しやすくなる
・行政・インフルエンサーが発信することで、こども食堂支援の認知度が向上
「エミタル」は、支援を「見える化」することで、企業・こども食堂・社会全体に笑顔を届ける仕組みを目指す。
③デジタル公民館「あたいぐわ~」
◾️ 現状と課題
社会の変化が加速する中で、ひきこもりの人々(子どもから後期高齢者まで)が安心して過ごせる居場所が不足している。
特に、デジタル空間における新たな居場所づくりが求められているが、現状ではそのような場が十分に整備されていない。
ひきこもりがちな人々にとって、リアルな公民館のような場に足を運ぶことがハードルとなり、社会とつながる機会がさらに減少してしまう。
◾️ アイデア:メタバースでつながる デジタル公民館「あたいぐわ~」
メタバース空間に無料で利用できる「デジタル公民館」を開設し、年齢や状況に応じた多様な活動を提供する。
◾️あたいぐわ~の特徴と仕組み
メタバース上に仮想の公民館を設置し、気軽に集える「居場所」を提供。
友人づくりやコミュニティ活動ができる場として、遊びや学びのコンテンツを充実。
年間行事予定を作成し、各世代のニーズに合わせたイベントを開催。
(例)・毎週○曜日はオンライン交流会やゲーム大会
・毎週△曜日は後期高齢者向けの学びの場(デジタル講習、趣味の講座など)
・季節ごとにお祭りや特別イベントを実施
・子どもたちへの告知やSNS発信を活用し、認知度を高める
・後期高齢者向けの勉強会を開催し、デジタル活用をサポート
◾️期待される効果
・ひきこもりの人々が安心して社会とつながる機会を得られる
・世代を超えた交流の場として、新たなコミュニティが形成される
・リアルな公民館に行きにくい人でも、デジタル空間なら気軽に参加できる
・企業や行政と連携することで、より幅広い支援やイベントが可能になる
「あたいぐわ~」は、メタバースの力を活用し、誰もがつながれる新しい形の公民館を目指す。
④校内安全こども食堂MAP
◾️ 課題・現状
こども食堂は必要な支援を提供しているにもかかわらず、利用する子どもが少ないという課題がある。その背景には、以下のような要因がある。
・子どもが一人で行ける範囲にこども食堂がない
・そもそもこども食堂の存在を知らない
・自分の近くにこども食堂があるかどうかが分からない
・「困っている人が行く場所」と誤解され、利用をためらってしまう
・身近に利用者がいないため、気軽に行ける雰囲気がない
これらの課題を解決し、子どもが安心してこども食堂にアクセスできる仕組みが求められている。
◾️ アイデア:「校内安全こども食堂MAP」
子どもが安心して利用できるこども食堂を 「身近な安全の一部」として認識できる仕組みを構築する。
◾️具体的な施策
1.校区の「安全マップ」にこども食堂をプロット
こども食堂単体のマップでは認知度が低く、活用されにくいため、すでに活用されている 「校内安全マップ」に組み込む。
子ども110番の家や避難場所とともに、こども食堂の所在地を掲載し、「地域の安全拠点」としての役割を持たせる。
2.家庭訪問時に「校内安全こども食堂MAP」を配布
教師が家庭訪問時に配布することで、子どもだけでなく保護者にも認知してもらう。
「こども食堂は誰でも利用できる場所」というメッセージを伝え、利用への心理的ハードルを下げる。
3.学校・地域ぐるみでの周知
学校の掲示板や保護者向けの通信に掲載し、継続的に情報提供。
PTAや地域の見守り隊と連携し、子どもが安心してこども食堂に行ける環境を整える。
◾️期待される効果
・こども食堂が「困ったときの特別な場所」ではなく、「地域の安全な場所」として認識される
・学校・家庭・地域が一体となって、こども食堂へのアクセスを支援できる
・子どもが安心して一人で行ける範囲にあるこども食堂を見つけやすくなる
・家庭訪問を活用することで、支援が必要な子どもと保護者にも自然に情報が届く
「校内安全こども食堂MAP」 は、こども食堂の認知度を高めるだけでなく、地域全体で子どもを支える仕組みを強化する新たな取り組みとなる。
⑤こども食堂とボランティア人材をつなぐマッチングアプリ
◾️ 現状と課題
こども食堂は地域の子どもたちを支える大切な場であるが、必要なボランティア人材の確保が課題となっている。
・こども食堂が求めるボランティアの数やスキルが周知されていない
・ボランティアを希望する人が、どこでどのような活動ができるのか分からない
・ボランティア先と参加希望者のマッチングがうまくいかず、継続的な活動が難しい
・こども食堂側が求めるスキルを持った人材が不足している
この課題を解決し、ボランティアの定着と持続可能な支援の仕組みをつくることが必要である。
◾️ アイデア:「こども食堂ボランティアマッチングアプリ」
こども食堂とボランティア希望者をスムーズにマッチングするアプリを開発し、必要な人材の確保と継続的な支援を可能にする。
◾️アプリの主な機能
1.ボランティア募集情報の可視化
こども食堂が「求めるスキル・活動時間・活動内容」を登録し、必要な人材情報を明確に提示。
ボランティア希望者が自分に合った活動を探しやすくする。
2.ボランティアのプロフィール登録・スキルマッチング
ボランティア希望者は、興味・経験・スキル・活動可能な時間帯などのプロフィールを登録。
マッチングシステムにより、こども食堂が求めるスキルと合致した人材が推薦される。
3.マッチングと継続支援の仕組み
マッチング後、ボランティア体験のレビューを残せる仕組みを導入し、双方の満足度を高める。
更に、ポイント制などを導入し、リピーターを増やす工夫をする。
4.通知&リマインド機能
こども食堂側は「急募」「短時間OK」など、ボランティアを気軽に募集できる通知機能を活用。
ボランティア側には、自分が希望する時間に適した募集があるとプッシュ通知でお知らせすることが可能。
◾️期待される効果
・こども食堂が必要な人材を確保しやすくなる
・ボランティア希望者が自分に合った活動をスムーズに見つけられる
・短時間・単発のボランティアも参加しやすくなり、継続的な支援につながる
・アプリを通じた情報発信で、ボランティアの認知度向上と参加者増加が期待できる
このアプリにより、こども食堂とボランティアの架け橋をつくり、地域で支え合う仕組みを強化する。
最後に
改めまして、アイデアソンにご参加いただいた皆さまに感謝の気持ちをお伝えします。
皆さまのおかげで、こども食堂情報のオープンデータが公開され、更にオープンデータを活用することで、現場の課題が解決されたり、参加を希望する子どもや地域の方たちが必要な情報にアクセスしやすくなることが改めて実感できました。
それだけではなく、これまではイメージが難しかったオープンデータの利活用が、こども食堂を応援したい企業、団体、こども食堂の皆さまによって具体的に実現していく可能性があることを垣間見ることができました。こども食堂は、民間発の自主的・自発的な取り組みです。だからこそ、オープンデータ化を進めることで、民間の力を使って様々なアイデアが実現されていき、課題の解決や新たな可能性が広がっていくことが期待されます。
今回のイベントで終わらず、Discordを活用したコミュニティ「もぐらぼ」でともに活動していただけることを楽しみにしています!
主催:認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
企画・運営協力:アイパブリッシング株式会社
後援:沖縄県
自治体の皆さまへ
むすびえでは、一つひとつのこども食堂を把握・見える化することで、誰もが安心してアクセスできる環境を整えます。その先に、真に“あたりまえ”のものとしてこども食堂が認識され、多くの人がこども食堂を通じて未来をつくる社会活動に参加できるようにすることを目指しています。
※プロジェクト詳細はこちら
https://musubie.org/pickupproject/infra/
公開されるこども食堂情報が共通化されることで、参加を希望する子どもや地域の方たちが必要な情報にアクセスしやすくなることに加え、こども食堂を応援したい企業、団体、個人等による利活用が進み、さらに全国各地でこども食堂の活動に参加したり応援したりする動きが加速することが期待できます。また、自治体にも、こども食堂の情報を更新頻度高く掲示するメリットを実感していただけることが期待されます。
オープンデータ化されたこども食堂の情報を使った調査解析や、こども食堂を応援したい企業、団体、個人等 による利活用の促進、すべての子どもが、こども食堂にアクセスできるための情報インフラ整備のため、より多くの自治体さまへご協力いただきますようお願い申し上げます。
※オープンデータ化キットの詳細はこちら
https://musubie.org/news/9566/
こども食堂情報のオープンデータ化をお考えの際は、ぜひご相談ください。こども食堂のオープンデータ活用に向けた機運を高める上でのご相談もご連絡をお待ちしております。
od@musubie.org
担当:長井、薬師寺、尾木