認定NPO法人
全国こども食堂支援センター・むすびえ

【開催報告】「2025年度 こども食堂全国調査」記者発表会 ~全国で1万2,000カ所を超えるなか、明らかになった課題、現場の声もご紹介~


むすびえは12月11日(木)、2025年度の「こども食堂 全国箇所数調査」の速報値および「こども食堂の実態・困りごと調査」「こども食堂の認知調査」の結果をまとめ、「2025年度 こども食堂全国調査」として発表しました。

東京会場とオンラインのハイブリッド形式にて行った発表会には、メディア、こども食堂関係者、支援企業、たくさんの方にご関心をお寄せいただき、計300名以上の方にご参加いただきました。本調査にご協力いただいた皆さま、ご参加いただいた皆さまに、心より御礼申し上げます。

発表会の概要

はじめに: むすびえ理事長 三島理恵よりご挨拶

発表会当日の12月11日に7周年を迎えたむすびえのこれまでの歩みと、皆さまへの御礼をお伝えしました。また、こども食堂が全国で1万2,000カ所を超えた結果を受け、次のように述べました。

「家族のあり方が変化する状況において、家庭のなかだけで子育てをするのは難しい現状があります。だからこそ地域のつながりのなかで、ゆるやかに優しく支え合っていける地域をつくっていくことが必要なのではないかと思います。
こども食堂は食事提供のみならず、いろいろな世代の方が集まり、ごはんを食べて「おいしいね」と言い合って、心を通わせていく──そのなかで寂しさが解消されたり、お互いに小さなことに気付くことができる拠点になっています。
一方、調査では見過ごせない課題も明らかになりました。物価高騰の影響、資金・人材・物資の不足、こども食堂の数が増えたことで助成金が採択されづらくなったといった声も全国から寄せられました。また、社会のイメージと実態とのズレといった課題も明らかになりました。
こども食堂は、運営者の皆さん、地域ネットワーク団体をはじめ支える皆さんのがんばり、ふんばり、尽力、努力でなんとか保たれているのが現状です。
こども食堂が『みんなのインフラ』になっていくのであれば、みんなで支えていけるように、ぜひ多くの方に活動への参加をいただきたいと思っています。共感と共に応援が集まり、参加が広がっていくなかで、地域の希望が確かなものになっていくのだろうと思っています。
むすびえは今後とも、地域ネットワーク団体の皆さんと共に、こども食堂の立ち上げ、継続しやすい地域環境・仕組みづくりをしてまいります。」


1. 総括

北川 淳也(むすびえ 調査研究ディレクター)より、3つの調査結果の総括として、以下の視点でご説明をいたしました。

1.  こども食堂の「インフラ化」の加速と、その背景にある地域連携の進展
2.  多様化するこども食堂の実態と、地域でのさまざまなつながりをうむ起点としての価値 
3.  物価高、認知・イメージと実態のズレなどこども食堂の継続的な運営を揺るがす 「複合的な課題」

(参考資料)
「2025年度こども食堂全国調査」総括 ―地域のインフラとして広がるこども食堂、一方で物価高など様々な課題に直面 


2. 調査結果発表

「2025年度 全国こども食堂箇所数調査」 (速報値)

むすびえ プロジェクトリーダー:尾木 和佳子
(参考資料)資料1:こども食堂全国箇所数調査2025結果のポイント
▼詳しい調査結果はこちら
「こども食堂 全国箇所数調査」の【速報値】(2025年12月)https://musubie.org/news/press/28676

「こども食堂の実態・困りごと調査2025」「こども食堂の認知調査2025」

むすびえ プロジェクトリーダー:井上 紀子
(参考資料)「こども食堂の実態・困りごと調査2025」および 「こども食堂の認知調査2025」結果のポイント 
▼詳しい調査結果はこちら
・むすびえHP新着情報「こども食堂の実態・困りごと調査 2025」https://musubie.org/news/press/28678
・「こども食堂の認知調査2025」https://musubie.org/news/press/28673


3. こども食堂を支える人たちと こども食堂のいま 

こども食堂を支える地域ネットワーク団体と、こども食堂の現場の声を、以下の皆さんよりお伝えいただきました。

東海林 尚文さん
(埼玉県子ども食堂ネットワーク 代表理事)

12月11日発表時点で255団体が加盟しており、むすびえ設立よりも早い2017年から活動を続ける同団体。
こども食堂の立ち上げ、運営サポート、食材支援にとどまらず、「多様なこども食堂をいかに支えていくか」をテーマに、さまざまな取り組みを行う様子をお伝えいただきました。

子どもたちに「体験」「経験」の格差があるなか、「こども食堂でできること」を考えて活動の幅を広げていくと、企業との連携から、これまで思いもよらなかった新しいプログラムを実現できることもあり、こども食堂の新たなフェーズを感じているそうです。

企業からは、ご寄付のみならず、工場見学や農業体験といった「体験」のご提供があり、とても貴重な機会になっているとのこと。
事例として、地元企業からの提案で行った「親子ボウリング大会」をご紹介いただきました。
14レーンを借りて70名ほどが参加し、場内でみんなでごはんも食べる「こども食堂」と表彰式も行うなど、これまで3回開催した大会は大好評だったそう。ボウリングをしたことがないお子さんや保護者さんにとっても、楽しい体験となりました。

東海林さんは、
「大切なのはどうやって地域に根付いていくか。誰でも来れる『地域のオアシス』として浸透させていけたらと思っている。がんばって運営している方々がひとりぼっちになることがないように、これからも一生懸命前に進んでいきたいと思います」
と想いを語ってくださいました。


望月 志保さん
(あさかニコまる食堂 代表)

埼玉県の朝霞市でこども食堂を運営する望月さん。
名前に含まれる「ニコニコマーク」には、みんながニコニコ、まんまるな笑顔になれる場所に、という想いが込められているそうです。

コロナ禍の2020年に設立し、食品配布の活動からスタート。コロナが5類になったタイミングで、念願の「会食」の活動をスタートした一方で、小さなお子さんのいる参加者からの声を受け、現在もお弁当配布を並行して月に1回行っているそうです。
拠点は持たず、町内会館で子どもは無料、大人の参加者からは代金をいただいて運営されています。
食堂のみならず、長期休みにはお昼ごはん付きで長い時間過ごせる「ニコまる広場」や「夏祭り」なども開催。
こども食堂を実際に訪れた企業担当の方と一緒にメニューを提供し、「本当のお店みたい!」と子どもたちに大好評の企業とのコラボレーション企画も行ったそうです。

ご自身のこども食堂運営に加え、県域・市域の地域ネットワーク団体の活動にも尽力されている望月さんは、
「ひとりではできない活動で、ネットワークに加盟して他団体や企業、個人支援者の方ともたくさんつながって継続できています。」
と、その活動と想いをご紹介くださいました。


吉川 洋平さん
(和歌山県庁共生社会推進部こども家庭局こども未来課 主査)

オンラインでご登壇いただいた吉川さん。「地域と密につながる和歌山県 こども食堂推進体制について」をテーマに発表くださいました。

今回、「+81.71%」と全国1位の増加率となった和歌山県。
県知事から「こどもまんなか」に注力する、というトップメッセージが発されたことも、県内の意識が変わる大きなきっかけになったそうです。
県の支援事業として、「和歌山こども食堂支援事業補助金」で補助額・補助率の拡充を行い、新規設立支援など、さまざまな側面から支えている事例や、
「和歌山県こども食堂応援ネットワーク」では、こども食堂同士の交流やセミナー、こども食堂の立ち上げもサポートするヘルプメイト制度など、県とネットワークが強固に連携して充実した支援を行っている事例をご紹介いただきました。

吉川さんが所属する「こども未来課」は、出先機関である振興局の地域づくり課に集まる地域情報を本庁関係課と共有・連携してこども食堂の支援および拡大に取り組んでいます。各地域の振興局に担当者がいることで、地域に合わせた支援の展開を実現しているそうです。
振興局がこども食堂を支える地域ネットワーク団体の立ち上げを主導するケースも進んでおり、各担当者が地域のこども食堂に合わせたサポートができる体制を構築されています。

「有田振興局では、管内市町の社協や食堂運営者等へのヒアリング、勉強会の実施や管内企業への支援依頼を行ってまいりました。2025年2月から有田地域こども食堂支援ネットワークを設立し、地域イベントを活用してこども食堂への正しい認知を広げる啓発活動や、管内の企業や地元の高校へのボランティア募集、企業からの『顔の見える支援』の実施など、『地域のこども食堂を地域で支える、支援の輪を広げる』取り組みを行っています。」
と、地域とこども食堂・企業がつながり合った、持続的な支援体制の確立ができている事例をご紹介いただきました。


こども食堂が地域のインフラとして広がる一方で、物価高騰をはじめさまざまな困りごと、課題も明らかになった、「2025年度 こども食堂全国調査」。この結果を受け、むすびえではこども食堂が持続可能な活動となるよう、必要な支援活動につなげてまいります。

改めまして、こども食堂に関わる方々や報道機関の方々をはじめ、今回の発表会へご参加くださった全ての皆さまに、お礼申し上げます。

▼メディア関係者の皆さま
本件に関するプレスリリースは以下よりご確認ください。
※メディア限定情報として、素材共有のためのURLもご案内しております。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000117.000044382.html