事業目的
コロナ禍や物価高騰の影響を受けやすいひとり親家庭を始めとした要支援世帯のこども等を対象に、食事や食品・食材、学用品、生活必需品の提供を行うこども食堂やこども宅食、フードパントリー等を実施する事業者に対して、広域的に運営支援、物資支援等の支援を行う民間団体の取組を支援することにより、こどもの貧困や孤独・孤立への緊急的な支援を行うこと。
- 助成対象期間:2023年7月20日~2024年1月31日(追加募集は2023年10月1日~2024年1月31日)の最長7か月弱
- 助成団体:総数181団体(1次募集146団体 追加募集35団体)
- 参考)募集要項 https://musubie.org/news/7069/
訪問レポート
むすびえは本事業において、昨年度に引き続き、こども食堂が行うひとり親家庭等の食事等支援活動を支援しました。そして、実際に本助成を活用いただいた団体を訪問し、支援活動について体験を交えてお話を伺いました。
―― 熊谷なないろ食堂 代表 山口純子さん(埼玉県熊谷市)
熊谷なないろ食堂(NPO法人SK人権ネット)では、要支援世帯を含むお弁当配布(毎週月・水・金曜日)と、要支援児童への学習支援の補食として食事提供を行っています。
中学生以下は100円(要支援家庭は無料)で販売し、1日に調理する数量は約180食。
調理のお手伝いをしながらお話を伺いました。
● 180人への支援について
「こども食堂を始めた当初は月に1回しか開催できませんでした。ひとり親のご家庭等の子どもたちを支援したい気持ちはあるものの、なかなか思い通りにはいきませんでしたが、続けていくうちに学校の先生や行政担当者から直接ご相談をいただけるようになりました。学校関係者でもない、行政職員でもないこども食堂の人間が生活品をお届けするからこそ、つながれる家庭もあるということをとても大切に感じています。その想いで活動を続け、気づいたら180食になっていました。」
● 調理するスタッフについて
「熊谷なないろ食堂では、性別も年齢も様々なスタッフが運営に参加してくれています。曜日によって参加するボランティアさんの顔ぶれも変わります。皆さんの参加のきっかけも多様で、社会福祉協議会からのご紹介や、直接のお問合せ、ボランティアさんのお友達などです。ご縁をいただき皆さんに助けられています。」
● 食材の調達について
「熊谷地域は、畑を有する方が多く、農家さんもいます。こういった方々に私どもの活動を知っていただき、食材を分けていただく事から始めました。スタート当初はお借りした場所で開催していたこともあり、思うように食材を確保、保存することも出来ませんでしたが、現在は拠点を構えることが出来たので、気づけば毎日、多くの方からご寄付が届くようになりました。ご寄付いただいたお米や、野菜、果物と購入したお肉や魚を使ったメニューを毎日スタッフが考え調理しています。余さず使い切ることがポイントです!
そして、活動を続けることで、地元企業さんから多大なご支援を賜り、日々の活動に役立っているほか、スーパーと協働してフードロス事業にも参加しています。」
本助成を活用いただいた成果・今後の展望
「物価高騰の影響は顕著でお弁当の品数に直結します。今まで2個入れていた唐揚げを1つ減らしながら食べ盛りの子どもの顔を思い浮かべると、とても苦しい思いでしたが、この助成金を使わせていただいたことで、減らすことなく作りお渡しできました。助成金は支援家族の負担軽減だけでなく、私たちスタッフの心もケアしてくれたように感じます。
会食スタイルからお弁当配布、学習支援の活動へと必要な支援に対し、柔軟に展開できているのは、地域の方々(ボランティアの方、企業、行政、学校)のサポートがあってのことです。心より感謝申し上げます。
今後も、一人でも多くの子どもへ支援が届けられるよう、食と学習、居場所を通じて活動して参ります。」
―― みなと子ども食堂 代表 福崎聖子さん(東京都港区)
みなと子ども食堂(NPO法人みなと子ども食堂)では、毎月1回のフードパントリー、弁当配付や週1回の学習支援のほか、不定期ではありますがこども食堂を開催しています。今回は、フードパントリー事業を見学しました。毎回200世帯以上へ食材を配付しており、ボランティアの方20名程で支援物資を各世帯分に分配します。
配付品のお品書きには、ご寄付いただいた方のお名前も記載されており、多くの企業や個人の方からのご支援であることが伝わる内容でした。
配布品は、総重量3~5Kg程度の食材をお渡しできているようで、米・青果・乾物・お菓子や日用品などバラエティに富んでおり、それぞれ1セットずつ小分けにしていました。
とても印象的だったのが、ボランティアの人数の多さです。毎回20~30名は参加されるそうで、皆さんお友達がお友達を連れてくるという支援活動の連鎖があるそうです。
そして、200世帯分の食材を運び込み、仕分けする作業で、梱包材や段ボールの処分に工夫が必要であることがとてもよく理解できました。
見学当日は、パントリー事業と一緒に、無料法律相談会も開催され、要支援世帯の方へ多面的な支援を展開されていることも拝見出来ました。
本助成を活用いただいた成果・今後の展望
「イベントのお菓子がとても喜ばれました。ハロウィンやクリスマスです。大人も子どもも豊かな気持ちになるようで、笑顔が多くみられたように感じました。また、生活用品のオムツや生理用品の需要も大きかったです。
みなと子ども食堂の原点であるこども食堂ですが、4月から開催を予定しております。
また子どもたちの声で賑わう場所にしていきたいです。」
―― 食育カフェEDEN 代表 富永茜さん(東京都江東区)
食育カフェEDENでは、都市開発により続々と建てられた新しいマンションが林立し、居住者が増えご近所付き合いが希薄になりがちな中、同世代の共働き世帯やひとり親世帯が助け合いながら、月に数回、不定期で食育カフェ、パントリーを開催しています。
メインのスタッフは代表の富永茜さんと副代表の阿部一美さんのお二人のみ。準備はほとんどお二人で行い、ボランティアも少人数でした。ただ仕事を終えて駆けつけた参加者のお母さんが「遅くなったわ!何をやればいい?」とごく自然にお手伝いを始めたり、主催者、支援者という関係ではない、お互いに子育てを助け合おうね!という雰囲気が素敵でした。
メニューはスパイスの効いたカレーと、学校給食のレシピで作られた2種類のカレーの味比べ。想定外の椎茸のご寄付があり、急遽椎茸をポタージュスープに。今回は果物、缶詰の寄付も多く、「じゃあフルーツポンチにしよう!」と子どもたちもお手伝い。
何事も自由に、臨機応変に、代表の富永さんも「いつも参加する皆さんに助けられているんですよ」と語っておられました。
セキュリティ管理がしっかりとしたマンション内のスペースを利用するため、参加には事前登録をして受付け連絡、必ず誰が出席したかを把握することが開催のルールだそうです。
この日はインフルエンザが流行っていたので、参加者もお持ち帰りが多く、家族分を取りに来る方が目立ちました。
本助成を活用いただいた成果・今後の展望
「学校が冬休み中の年末年始に費用がかかる行事が多いため、助成金があり大変助かりました。また、ひとり親世帯の方からご相談があり、生活面、精神面で支援ができました。
元々は古い町ではありますが、急速な都市開発で、人口がどんどん増えているので、ご近所のつながりや、移住されてきた人のつながりを確認し合うための食育カフェなどの居場所の必要性を強く感じています。」
―― 事務局より ――
長期化するコロナ感染症による活動の制限や自粛、高騰する物価など社会情勢の変化は、日頃から余裕のない世帯が真っ先に金銭的負担として影響を受けやすく、その負担が、食の偏りや食の制限へと繋がる危険を多分に孕んでいます。
私たちは、本事業を通して、給食がない時期の食支援活動の強化、対象世帯の経済的・精神的負担の軽減、そしてこども食堂がつながり、対象世帯(ひとり親家庭等)の子どもの食支援ができている状態を目指しました。
全国から申請をいただき、慎重な審査の結果181のこども食堂及び食事支援事業運営団体を採択し、目指す未来へ歩みを進めることができました。
申請書の段階では想像しきれなかった事業内容も、皆さまからご提出いただいた報告書から創意工夫を含めて拝読しており、支援の必要性を更に強く感じております。
皆さまのご協力に、あらためて感謝申し上げます。
採択されたこども食堂等の運営者の皆さまにおかれましては、事業を進める中で、予定外の出費や計画変更を余儀なくされるケースもあったかと思います。事務局へも数々のご要望が寄せられましたが、申請された事業の費用を支援するという本プログラムの目的と、公平性や事前ルールと照らし合わせて、全てのご希望に沿うことが出来なかったこともご報告申し上げます。
このように、運営者の皆さまには、多大なるご理解をいただき、今年度も事業を終えることが出来ました事を深く御礼申し上げ、今期賜りましたご要望は今後に活かせるように努めてまいります。
これからも、社会課題を解決するよきパートナーとして、忌憚ないご意見やご要望をお寄せいただけますと幸いです。支援を必要とする方々へ向けた活動をサポートできるよう、今後も取り組んでまいります。
末筆になりましたが、見学訪問にご協力いただきました皆さま、誠にありがとうございました。
【問い合わせ先】
むすびえ・令和5年度ひとり親家庭等のこどもの食事等支援事業 事務局
2023hitorioya@musubie.org