地域のみんなで話そう「私たちの防災」
私たち「むすびえ」では、地域ネットワーク団体を通じたこども食堂への支援の一つとして、防災についての取組「こども食堂防災拠点化プロジェクト」を行っています。 この活動の一環として、こども食堂防災研修を開催しておりますが、今年度は「こども食堂防災研修2023全国ツアー」と題して、全国各地のこども食堂関係者の方たちと「防災」を通じた学びと交流を企画しました。第8回目は長崎県佐世保市です。
今回の防災研修は長崎国際大学との共催で、こども食堂運営者だけでなく、地域の大切なリソースでもある大学生(留学生)にも多く参加いただきました。海外との歴史ある土地柄のため「多様性」文化が根ざした地域での本研修は、インクルーシブ防災の観点からも、とても学びの多い研修になりましたので、ご報告申し上げます。
< 講座・訓練パート >
こども食堂を知ろう!危険を知らせよう!全員逃げよう!
今回の研修には、外国籍の学生も多く参加されており、「こども食堂ってなんだろう?聞いたことはあるけど・・・。」という方向けに、むすびえ森谷がこども食堂のご説明をしました。
多くのこども食堂は、誰でも来ていい場所
地域の人と触れ合う場所
今の日本に必要な場所
こういったことが伝わったと思います。
防災講座では、黒木講師の話に集中してメモを取ったり、深くうなずいたりして聞いておられました。
防災の話というと、みんな構えてしまいがちですが、黒木講師の軽快なトークと「構えなくてもいい、出来ることからちょっとずつ意識してみよう」という声かけで、肩の力を抜いて、でもしっかりと集中して講義を受けられていました。
講座の内容は防災を3つの視点で紐解きます。
テーマは「無理をしない防災」です。
- 知る ~地域の特徴を知ろう~
- 備える ~今日からできる備えってなんだろう~
- 行動する ~今日からできる防災の行動ってなんだろう~
訓練では、役割分担が決まらなかったり、割り当てられた役割以外のことに目がいかなかったり(通報係が電話をした後、子どもの避難誘導が終わっていないのに外に出てしまった等)と、「良い失敗」を経験いただきました。
< 防災食パート >
防災食を一緒に作って食べてみよう!
また、今回の研修では、フードバンク協和さんのご協力により、防災食を実際に作り食べる体験もしました。
みなさんの予想していた防災食より「結構おいしい!」と完食されていたのが印象的でした。
「今こんなにおいしいのね」「ドライカレーってあるけど、他にも味があるのかしら?」「子どもの顔を思い浮かべると、このカレーはちょっと辛いかも。他の味も調べてみよう」などの感想がありました。
また、アルファ米にお水を入れる際に、底をしっかり広げないまま水を入れたため、水分量が足りずに芯が残ってしまったグループもあって「あ~、そういうのもしっかりやらないとダメね」と失敗の経験もしていただけたようです。
こども食堂が防災意識を備えることの大切さや、災害時に自分たちができることの可能性を考えてもらう「きっかけ」になったと思いました。
参加者からの声
参加者(こども食堂の皆さん)
- うちのこども食堂は高齢者の参加も多いから、避難とか考えなくてはいけない。
- 親との連絡はどうしようか。
学生
- 防災食の試食って宇宙食みたいなものをイメージしていたので、おいしくて驚いた。
- 冷たいご飯は少し寂しい感じもするけど、おいしい。
- こども食堂という活動を今回初めて勉強した。
留学生
- 子どもたちが安心して過ごせる施設があるということを知れた。どこで開催情報を知れるのか?
- 今回の研修はすごく大事なことだと思いました。地震の経験がないので、練習がとっても必要。
- 外国人にとって日本語は難しい。とっても練習が必要。
- どこに何があるのか土地勘がないので、地震が起きたら何をどうして良いかわからない、すごくこわいと思った。
主催団体の感想
■佐世保市こども食堂ネットワーク 代表 数山優里さん
長崎は地震が少ないこともあり、防災というと「地震」のイメージが強いので、防災の意識がとても低いと感じています。そして、街中は、坂は多いが土砂崩など大規模なものは少ない。雪や火山も無い。台風も昔は来ていたけど、最近は気候変動で宮崎を通るようになって長崎にはあまり来なくなったので、自然災害を考えたら意識が低くなってしまうかもしれないけれど、災害はそれだけじゃないということが今回の研修で学べたと思います。
特に訓練で”自分のこども食堂”に置き換えて考えたことで「そういえば消火器の場所わからない」「親との連絡はどうしようか」「うちは高齢者の参加も多いけど避難どうしよう」という具体的なイメージと危機感が持てたと思います。
こども食堂で子どもたちを預かっている以上、こういったリスクも知って、準備しておくことが大切だと改めて感じました。
■ 長崎国際大学 国際観光学科 佐野香織教授(専門多文化共生)
こども食堂って何だろう?という学生にも知ってもらいたく、共催させていただきました。
長崎国際大学には外国籍の学生も在籍しており、日本語が堪能でない人もたくさんいます。
今回大切だなと思ったのは、普段からの顔見知りをたくさん作って、何かあったときに助けを求められる場所があるということを知ること。
とにかく、困ったらこども食堂に行けばいいんだという心の備えがすごく大切だと思いました。
また、言葉の理解もとても大切だと考えています。
今回の研修にはスリランカと中国からの留学生も参加しました。普段は英語を基本に簡単な日本語でコミュニケーションをとっているので、発災時にスリランカの学生へ「危険」「避難」と言っても分からないです。しかし「あぶない」「にげろ」はわかります。
このように、佐世保は外国人も多いので、日本語だけど大事なことを伝える「やさしいにほんご」という考え方を頭に置いておいてほしいです。 「やさしいにほんご」は、阪神淡路大震災の避難所での経験から生まれたもので、今の日本には、こういう人たちがいることも覚えておいてほしいですし、日ごろから関係性を深めてほしいと思いました。
■イベント概要
開催日時:2024年1月20日(土)10:30~13:00
開催場所:長崎国際大学 食堂棟1階
講師:
黒木 淳子 (防災コンサルタント Mamoruwa代表)
森谷 哲 (むすびえこども食堂防災拠点化プロジェクトリーダー/防災士)
内容:
地域のみんなで話そう「私たちの防災」
~こども食堂防災研修 IN 佐世保市~
共催:佐世保市こども食堂ネットワーク / 長崎国際大学
協力:
長崎国際大学 国際観光学科 佐野香織研究室 / フードバンク協和
認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
「こども食堂防災拠点化プロジェクト」とは?
そこに集う人々の安全確保はもちろん、通常時だけでなく、有事の際にも地域の安心、安全な場として存在できるように、こども食堂の防災力を高めることを目的としています。
また、こども食堂の主体的な防災活動につながるよう、それぞれのこども食堂に「私たちに出来る防災」「地域みんなの防災」について考え・備える機会として防災研修や、さまざまな防災活動の支援提供をしています。
この活動を通して、地域における交流拠点(こども食堂)の認知向上と、つながりを再確認する機会の創出にも寄与しています。
こども食堂での防災研修、訓練をお考えの際は、是非ご相談ください。
本件に関するお問合せは、下記メールアドレスまでお願いします。
bousai@musubie.org(担当:森谷、久保井、六鹿、和泉)