―遺贈寄付の認知は67.4%から70.4%、
意向ありは7.6%から10.0%に上昇。
遺贈寄付の意義や価値は「社会の役に立てる」「個人の動かないお金が社会の生きたお金になる」「地域の子どもの役に立てる」「地域や人に恩返しができる」が7割以上―
むすびえは、2023年度遺贈寄付ウィークに合わせ、全国の40~70代男女3,000名を対象に、第2回「遺贈寄付に関する実態調査」を実施しました。
本調査は、遺贈寄付に関する実態および寄付の地域内循環(地産地消)の意向について調査することを通して、遺贈寄付の健全な発展と広がりが図られることを目的としたものです。
なお、第1回調査は2021年8月に実施しています。
*第1回「遺贈寄付に関する実態調査」(2021年8月27日~30日実施)結果発表
https://musubie.org/news/3922/
「遺贈寄付」とは
「遺贈」とは、お亡くなりになる方が、遺言によって、財産の全部または一部を法定相続人または法定相続人以外の第三者に無償で譲与することをいいます。
このうち、社会貢献活動に役立てるため公益法人等に遺贈することを「遺贈寄付」といいます。ほかにも、相続財産の寄付や信託など故人の遺産を寄付するさまざまな方法があります。
むすびえでは、遺言による寄付だけでなく、故人の思いがつまった寄付を「遺贈寄付」としています。
「遺贈寄付」に関する日本と諸外国の動向
少子高齢化が加速し、社会課題が山積する日本において、人生の集大成としての寄付である「遺贈寄付」が寄付者本人が望む最適な形で実現し、寄付した財産が社会の未来資産となり世代を超えて継承される社会の実現をめざして、2016年、NPOや弁護士・税理士等専門家を中心に全国レガシーギフト協会が設立され、その推進が図られています。
また、国際的には9月13日を「国際遺贈寄付の日(International Legacy Giving Day)」と定め、この前後に、英国をはじめ欧米を中心として20か国以上で自国の文化や社会的背景に沿った形で、遺贈寄付の啓発キャンペーンが実施されており、日本も2020年から参加しています。
「遺贈寄付」の認知は70代で83.9%と最も高く、認知・意向ともに上昇
「遺贈寄付」に関する認知は、男女ともに年代が上がるにつれて高くなり、最も高い70代では83.9%となりました。
第1回調査結果と比較※すると、全体では67.4%から70.4%に上昇し、遺贈寄付の意向がある人の割合も全体で7.6%から10.0%に上昇しました。
ただ、「詳しく知っている」は5%前後に留まっており、十分な認知があるとはいえない現状もうかがえます。
※第1回調査の調査対象者は50~70代のため、50代以上で比較
《遺贈寄付の認知》
Q.「遺贈」(遺言で非営利団体など相続人以外の者に遺産を残すこと)を知っていますか。
遺贈の意向がある理由は、全体では「社会に貢献したいから」が37.0%と最も高く、続いて「自分の財産を自分の意思で処分したいから」が32.5%でした。
性年代別でみると、男性40代では「身内の看取りがあったから」、女性60代では「活動に共感した団体があったから」なども比較的高い結果となりました。
《遺贈寄付の意向がある理由》
Q.「すでに遺贈を含む遺言書を作成した」「遺贈の準備を進めている」「遺贈したい(具体的な準備はしていない)」「遺贈してもよい(具体的な準備はしていない)」と回答された理由は何ですか。
反対に「遺贈するかわからない」「遺贈はしたくない」理由は、全体では「今後の生活費が不安だから」が39.9%と最も高く、「相続時点で財産が残っていなさそうだから」が31.2%、「相続人に全財産を残したいから」が29.5%と続きますが、「遺贈はしたくない」人のみでみると、「相続人に全財産を残したいから」が42.4%と最も高くなりました。
《遺贈寄付の意向がない理由》
Q.「遺贈するかわからない」「遺贈はしたくない」と感じる理由は何ですか。
遺贈寄付の意義や価値は、遺贈の意向がある人では「社会の役に立てる」「個人の動かないお金が社会の生きたお金になる」「地域の子どもの役に立てる」「地域や人に恩返しができる」が7割以上
「遺贈寄付の意義や価値についての考え」を以下のグラフにある12項目で聞いたところ、遺贈の意向の有無にかかわらず、「そう思う」人の割合が最も高かったのは「資産家・富裕層などお金持ちが行うこと」で、54.6%でした。
遺贈寄付の意向がある人のみでみると、「社会の役に立てる」が79.4%と最も高く、「個人の動かないお金が社会の生きたお金になる」「地域の子どもの役に立てる」「地域や人に恩返しができる」と続き、ともに7割以上となっていました。
一方、遺贈の意向がない人では、「お金持ちが行うこと」「自分には関係ないこと」が半数以上を占めていました。
「遺贈寄付」は裕福な人たちが行うことで、自分には縁遠いと感じる傾向が前回調査から引き続きみられ、遺贈の意向にも影響しているということがうかがえます。
《遺贈寄付の意義や価値》
Q.「遺贈」の意義や価値について、どのようにお考えですか。
寄付先に重視されるのは「使途が明確(透明性)」「団体の信頼性」「活動への共感」
遺贈寄付先で重視されるのは、遺贈の意向のある人では「使途が明確(透明性)」「団体の信頼性」がともに47.6%と最も高く、続いて「活動への共感」45.7%、「公益性」27.0%、「寄付方法のわかりやすさ」24.8%、「活動報告の定期的な公表」19.9%、「何らかの関わりがある団体」18.3%となっていました。
遺贈寄付を受けるNPO法人等には、社会的な信頼を得ながら、しっかり目に見える形で活動を行っていること、より身近に感じられるような存在であることが求められていると考えられます。
《遺贈寄付の寄付先に重視する点》
Q.「遺贈」するとしたら、寄付先にはどのような点を重視しますか。
また、第1回調査結果と比較※すると、「団体の信頼性」が64.6%から49.5%に低下、「団体による手続きサポート」が10.5%から17.1%に上昇していました。
※第1回調査の調査対象者は50~70代のため、50代以上で比較
《遺贈寄付の寄付先に重視する点》
Q.「遺贈」するとしたら、寄付先にはどのような点を重視しますか。
遺贈寄付を行う際の懸念点は「必要な手続き」
普及を進めるためには「公的な相談窓口」「サポートする仕組み」が必要
遺贈寄付を行う際の懸念点は、遺贈の意向がある人では「必要な手続き」が40.8%と最も高く、次いで「信頼できる団体の選び方」が35.4%、「寄付の使い道」が33.4%、「手続きにかかる費用」が33.4%と続いていました。
また、遺贈寄付が広く普及するための方策としては、「公的な相談窓口の増加」が27.6%と最も高く、次いで「サポートする仕組み」25.2%、「遺贈の意義やしくみについて学ぶ機会が増えること」23.3%と挙げられていました。
特に、遺贈の意向がある人では、「サポートする仕組み」を挙げる人が約4割と「公的な相談窓口の増加」に次いで高く、その必要性の高さがうかがえました。
《遺贈寄付が広く普及するための方策》
Q.どのような制度やサービスがあれば「遺贈」が広く普及すると思いますか。
こども食堂に関する認知・利用の意向ともに上昇
第1回調査結果と比較※すると、「こども食堂」に関する認知は、全体では93.1%から94.6%に上昇しました。男女別でみると、依然として女性の認知が高い傾向にありました。
※第1回調査の調査対象者は50~70代のため、50代以上で比較
《こども食堂の認知》
Q.こども食堂を知っていますか。
こども食堂の認知経路については、最も多い理由である「テレビで」は85.3%から79.5%に低下し、「インターネットの記事等で」「家族・友人・知人等の人づてで」「実際に近所等で見かけた」「SNSで」が上昇していました。
《こども食堂の認知経路》
Q.こども食堂のことをどこで知りましたか。
また、こども食堂の利用については、「行ってみたい」が6.7%から8.5%に上昇し、利用に前向きな方の割合は全体で26.2%から29.2%に上昇しました。
こども食堂に行ってみたい理由では「楽しそうだから」が12.2%から17.1%に上昇し、
行ってみたいと思わない理由では「どんなところかよくわからないから」が22.6%から15.4%に低下していました。
こども食堂の認知・理解は広がってきており、より身近な存在になっていることがうかがえます。
「遺贈寄付」について正しい理解を広げていくため、継続した働きかけが必要
寄付と地域の明るい未来との好循環をめざして
第2回の調査を実施し、遺贈寄付の認知・意向の向上はみられましたが、遺贈寄付の意味や価値に対する正しい理解の普及がまだまだ不足している状況も明らかとなりました。
正しい理解の拡大のため、継続した働きかけの必要性を感じました。
また、お住まいの地域の未来について、第1回調査と比較して「やや明るい」と感じる人の割合が増え、「明るい」と感じる人と合わせて17.5%から20.5%に上昇していました。
地域の未来が「明るい」と考える人は、地域支援のための寄付の意向が高いという結果も出ていました。
むすびえは、寄付が資源の地域内循環(地産地消)を促し、地域の課題解決に寄与することで、地域の未来に期待する人がさらに増え、また次の寄付へつながっていく……という好循環が全国各地に生み出されるよう活動していきたいと考えます。
【調査概要】
調査名:第2回遺贈寄付に関する実態調査
調査方法:インターネットモニター調査
調査地域・対象者:全国・40代〜70代の男女
サンプル数:3,000サンプル
調査実施期間:2023年9月8日(金)~9月12日(火)
調査実施機関::株式会社インテージ、株式会社インテージリサーチ
協力:遺贈寄附推進機構株式会社、一般社団法人全国レガシーギフト協会、一般社団法人全国コミュニティ財団協会、一般社団法人日本承継寄付協会
*本調査は、遺贈寄付の健全な発展と広がりのために実施したものです。
希望される団体には調査結果レポートをお渡しいたしますので、以下のフォームよりお申し込みください。
レポート送付お申し込みフォーム:https://forms.gle/xFE8jnjcNzau1RaE6
(申し込み締切:2023年12月27日(水))
まだまだ多い「遺贈寄付の2大勘違い」
齋藤 弘道 氏(遺贈寄附推進機構株式会社 代表取締役・全国レガシーギフト協会 理事)
遺贈寄付したくない理由のトップが「今後の生活費が不安だから」、遺贈寄付の意義や価値についての考えのトップが「お金持ちが行うこと」。
今回の調査でも、この「遺贈寄付の2大勘違い」が根強く存在することが浮き彫りになりました。
遺贈は人生最後に残った財産の中から寄付するものですから、今後の生活費には影響がありません。また、ほんの少額でも立派な遺贈寄付です。例えば「私の金融資産の1%を◯◯に遺贈する」と遺言に書くことは、お金持ちでなくてもできると思います。
その一方で、遺贈寄付の認知は前回より高く、70代では83.9%という結果です。遺贈寄付という言葉ができてから10年も経っていないことを考えると、急速に認知が広まっていることがわかります。
この認知が広まる段階の今こそ、「2大勘違い」を取り除き、遺贈寄付の正しい理解を広げることが必要だと感じました。
このような遺贈寄付に関する調査活動や寄付の地域内循環を促進する活動を通じて、遺贈寄付の分野においても、むすびえの果たす役割は大きいと考えています。
【遺贈寄付ウィークについて】
遺贈寄付ウィークは、9月13日の「国際遺贈寄付の日(International Legacy Giving Day)」を中心に、遺贈寄付の価値やその可能性についてともに考え、理解を深めるために実施されているキャンペーンです。
欧米を中心とする諸外国では、10年以上前から同様のキャンペーンが開催されており、日本においては、一般社団法人全国レガシーギフト協会 (本社:東京都港区)が2020年度から実施しています。
今年度は「遺贈寄付ウィーク2023」として、内閣府、外務省、文部科学省による後援のもと、60の協賛企業・団体・個人、66名の専門家士業の賛同を得て開催されました。
キャンペーン特設サイトURL:https://izoukifu.jp/campaign_2023/
【お問い合わせ】
認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ(遺贈寄付担当)
E-mail:izou@musubie.org