—- プロジェクトの概要
創業者W.K.ケロッグの意思を受け継ぎ、ビジネスの成長と同時に、社会貢献活動にも力を注いでいるケロッグ社。2030年までに30億人の人々にとってよりよい日々「Better Days」を実現する、という社会貢献活動に全社で取り組んでいます。日本ケロッグ合同会社(以下、日本ケロッグ)はなかでもSDGsの指標にある「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」などをゴールとして設定。こども食堂やフードバンク、学校や病院など食糧を必要としている人たちへ、年間30万食以上のシリアルの寄贈、食育活動、社員によるボランティア活動などを行ってきました。
日本ケロッグが設立 60 年を迎えた昨年、子どもたちの心身ともに元気な一日のスタートを応援する目的で新たに立ち上げたのが「ケロッグ 毎日朝ごはんプロジェクト」。登校前の子どもたちに、こども食堂で朝食を食べてもらったり、朝食の大切さや栄養について学べるケロッグオリジナルの食育動画を観てもらったりすることで、近年課題になっている子どもたちの朝食欠食や孤食、栄養不足などの課題解決を目指しています。2022年6月に16カ所から始まったプロジェクトにおいて、2030年までに全国47都道府県のこども食堂への展開を目指しています。
当プロジェクトの担当である広報部の山路真由さんに、活動についてお話を伺いました。
―― 支援しようと思ったきっかけを教えてください。
「Better Days」活動を推進していく中で、今、日本の子どもたちの食が大きな問題になっていることを知りました。子どもたちの朝食欠食や孤食の問題は、学力や体力だけでなく、心の成長にもネガティブな影響を及ぼす、軽視できない問題であることが指摘されています。この課題を解決するために、ケロッグが朝食のシリアルで長年培ってきた知見を生かせるのではないかと考えていたところ、こども食堂に「場」としての新たな可能性を感じたのです。
こども食堂にはこれまでもシリアルをご提供してきましたが、このような全国規模でのプロジェクトというのは初の取り組みとなります。今回はディスペンサーを貸し出し、こども食堂で朝食として食べるという試みを行っています。実はこのディスペンサーの設置が大当たり。ディスペンサーを回したくて、子どもたちは自ら進んで準備をし、楽しんで食事をしています。自分で朝食を用意することで朝食摂取習慣が育ちますし、皆で食べることで孤食の解消にもつながります。またシリアルの特性上、朝から忙しいこども食堂にとっても、子どもたち自らが準備して食べられるという簡便性という面でお役に立てるのではと思っています。
―― 支援に対しての想いや、実際支援している中で感じていること、具体的なエピソードなどを教えてください。
こども食堂といえば、夕食のイメージが強いのが現状です。プロジェクトを進めていくうちに、こども食堂で朝食が食べられるようにするには、シリアルなど物理的な支援だけでなく、安全面の課題をクリアしなくてはならないことに気がつきました。「朝にこども食堂を開きたいけれど、通学路から外れているために調整が難しい」などという話はよく耳にします。しかし、子どもの心身の健康上の問題を解決したいという想いは小学校も同じであることを考えると、道は拓けてくると感じています。
現在、朝食の提供を実施しているある地域では、こども食堂の主催者が普段から学校のサポート活動に携わり、小学校の校長先生と子どもの欠食について問題意識を互いに共有されています。朝食の提供は、当時の校長先生から「コンビニで朝ご飯の代わりにアイスクリームを買って食べる子や、朝食を食べないせいで体調不良の子がいるが何かできないものか」と相談されたことがきっかけだったといいます。このこども食堂では、朝食を食べ終えた子どもたちをスタッフが小学校の前まで連れていきます。安全面での対策もしっかり立てたことで通学路問題を克服しているのです。子どもの安全を守らなければならない小学校の立場と、子どもたちに居場所や食の楽しみを提供したいこども食堂が、お互いの立場を理解し合い、信頼関係を築くことが、何よりも大切なことだと感じています。
また社内でも、活動の様子を積極的に発信していったところ、社員からの関心も多く寄せられるようになりました。今の社会課題に目を向け、自分たちの日々の仕事がどのような社会貢献につながっているのかを知ってもらうことが、社員の誇りやモチベーションになっているのだと思います。夏休みの時期には、社員が子ども食堂に伺って、朝食や昼食のサポートを行うボランティアも実施しました。
―― 今後こども食堂やむすびえとどのようにかかわっていこうと考えていらっしゃいますか。
これからもこども食堂の方々とコミュニケーションを密に取り、気持ちを確かめ合いながら進めていきたいです。コミュニケーションが希薄になると、いつの間にか方向性に大きなずれが生まれてしまうことがあります。コロナ禍でも、オンラインでこども食堂の方たちの顔を見ながら話ができたことで、お互いの状況や想いが共有できたと思っています。
また、今回のプロジェクトを始動して、初めて見えてきた課題や発見がたくさんありました。今後も現場の声を吸い上げながら、こども食堂、自治体、学校、企業などさまざまな立場の人たちと協力しあって、子どもたちをサポートしていきたいと思っています。そして、地域が連携して社会課題の解決を図れるような世の中を作っていきたいと考えています。
▼ケロッグ毎日朝ごはんプロジェクトについて
―― むすびえメンバーより
こども食堂での「朝食開催」というのは単なる欠食問題解決にのみならず、朝ごはんを「みんなで」食べることで1日のモチベーション、通学へのモチベーションをちょっとあげるようなことができる、とても意義のあることだと感じています。その中で「シリアル」という、誰にでも馴染みがあり気兼ねに食べられるものを通してこども食堂へのご支援を進めてくださっているケロッグ様には本当に感謝しております。「ケロッグ 毎日朝ごはんプロジェクト」を通して、よりたくさんのこどもたちが朝食を積極的に摂ってくれることと併せて、こども食堂の朝食開催も運営者さんにとってよりハードルが低く感じられることも期待しつつ、むすびえとして引き続き協働を進めたいと思っています。