―― プロジェクトの概要
海外からの輸入商品や国内のグループ工場で製造した商品を、全国に展開するフランチャイズチェーン「業務スーパー」で販売している神戸物産。2018年12月から毎月1か所ずつ兵庫県のこども食堂をまわり、その回の食材をすべて提供する「業務スーパープレゼンツすてきな子ども食堂」企画を行っていました。しかし、新型コロナウイルスの影響で学校の休校が相次いだ2020年3月からは、現地での活動が困難に。そこで、取引先のネスレ日本株式会社、株式会社エフピコに呼びかけ、むすびえを通して全国のこども食堂へ食材を支援する「こども食堂支援セット」の提供を始めました。現在は2~3か月に1回、支援セットを届ける活動のほかにも、こども食堂のデザインをあしらったエコバッグを社内で制作し、全国の店舗で販売。売り上げの一部を寄付するなど、物資と資金面双方での支援を行っています。
当プロジェクトの主管部署である、経営企画部IR・広報担当 杉浦 秀爾さんにお話を伺いました。
―― 支援しようと思ったきっかけを教えてください。
当社が扱う商品は海外からの輸入品が多く、賞味期限の印字がかすれていたり、外観にダメージがあったりして、商品として販売することができないものもあります。そういった食材をこれまでフードバンク関西に提供する活動を行っていました。こども食堂に出会ったのは、提供した食材がその後どうなっていくのか、フードバンク関西の取り組みを社員に知ってもらうために社内報で特集したのがきっかけでした。取材をする中で、こども食堂の主催者から、食材調達の難しさやボランティア人材の高齢化、資金面の苦労など、さまざまな話を聞くことができました。ちょうどこども食堂がメディアに出始め、子どもの虐待など、小さな子どもが事件に巻き込まれるニュースが取りざたされた時期です。私たちもこども食堂を応援できないかという思いが生まれました。そして、月1回当社の社員がこども食堂に出向き、こども食堂のスタッフの要望を聞きながら、料理から配膳、後片付けまでお手伝いする「業務スーパープレゼンツ すてきな子ども食堂」の企画がスタートしたのです。しかし15回目を終えた2020年2月末から、新型コロナウイルスの影響で現地に出向くことができなくなってしまいました。学校が休校になり、給食もなくなる状況の中で、各地のこども食堂が従来の会食から持ち帰りやフードパントリーに形態を変えて存続させようと頑張っていることを知りました。私たちも食材の提供でより多くのこども食堂を支援しようと、同年3月に兵庫こども食堂ネットワークを通じてむすびえさんとつながり、全国のこども食堂への支援を開始しました。
―― 支援に対しての想いや、実際支援している中で感じていること、具体的なエピソードなどを教えてください。
実際にこども食堂に出向いてみると、これまで抱いていたイメージとはだいぶ異なっていました。公民館を借りて運営していたり、教会の2階と3階で階段を上り下りしながら食事を提供していたり、夜はバーになる店舗で運営しているところもあります。出入りするのもさまざまな年代の人たちで多様性があり、地域の誰もが行きやすい「みんなの居場所」を目指しているのだと体感することができました。一方で、こども食堂に手伝いに来ていた中学生の女の子が、当日のエビフライを家族の分まで喜んで持ち帰った姿が目に焼き付いています。必要としているところに届けることの大切さもあらためて感じました。こども食堂はこの10年で広がってきたものの、まだ地域に根差しているとは言い切れないかもしれません。私たち業務スーパーがかかわることで、こども食堂への関心がさらに高まり、まだ足を踏み入れたことのない人たちにとってのハードルも下がればと願っています。
また、日ごろから業務スーパー愛好家の方々が商品の紹介などをしてくれるSNSに、あるこども食堂の方が私たちの活動を紹介してくださったことがありました。すると愛好家の方たちが応援メッセージをくださったり、エコバッグを買ったりとムーブメントを起こしてくれたのです。食のインフラ企業として「食で人を支える」という使命を果たすには、社会貢献とビジネスの両輪を回すことが大切だと考えています。少しでも本業と接点を見出し、よい循環を生み出していくことは支援を継続する為のエンジンになると感じています。
―― 今後こども食堂やむすびえとどのようにかかわっていこうと考えていらっしゃいますか。
現在はネスレ日本株式会社、株式会社エフピコの2社と協業して「こども食堂支援セット」の提供を続けていますが、今後はさらに多くの企業との連携を進めていきたいと思っています。こども食堂での食事が持ち帰り形式になった時期、業務提携している株式会社エフピコに協力を呼びかけることで、食材の提供だけでなくお弁当容器を提供することができ、大変喜んでいただきました。1社ではできることは限られていますが、多くの企業と手を結ぶことで届けられるものが増え、支援も充実することを実感しています。
「久しぶりに子どもたちやお母さんとゆっくり話が出来たわ。ほんまありがとう。」
こども食堂のスタッフからかけられる言葉に、支援を続けてきてよかったと思います。今、オンラインでこども食堂とつなぎコミュニケーションをとる施策も模索していますが、コロナが終息したら、またぜひ全国のこども食堂に足を運んで現地での支援活動を再開したいと思っています。
―― むすびえメンバーより
2020年3月からスタートした「こども食堂支援セット」のご支援も、今年3月でちょうど10回目となりました。物資支援の仲介を立ち上げて間もない時期に、いち早くご支援をいただき、多くのこども食堂に食材を提供することが叶いました。毎回、運営者の皆さまの気持ちに寄り添い、手軽に利用できる食品やお菓子、お弁当容器など、現場で必要とされるものをご提供いただいており、多くの団体より喜びと感謝の声が寄せられています。年々こども食堂の数が増加する中で、神戸物産さまのご支援はこども食堂とむすびえを結びつける一助にもなっております。