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「ちょっといいこと」で社会をつなぐ〜豊島株式会社〜

プロジェクトの概要

天保12年(1841年)創業の豊島株式会社は、繊維原料から原糸、テキスタイル、最終製品に至るまで、ファッション産業のサプライチェーンを総合的に担う企業です。その活動は繊維分野にとどまらず、「ライフスタイル提案商社」を目指して、社会に貢献するモノづくりや、地球や地域の持続可能性に貢献するあらゆる活動を行っています。2005年にはオーガニックコットン普及推進プロジェクト「ORGABITS(オーガビッツ)」を開始しました。
オーガニックコットン製品を選択することは、生産に携わる人びとの暮らしや綿花を育てる土地の環境を守ることに繋がります。しかし、オーガニックコットンの価値や品質については理解されつつも、価格の高さが普及の障壁になっていました。
そこで豊島株式会社は、オーガニックコットン混率100%にこだわらず、1枚の洋服につきオーガニックコットンを10%以上使用した製品を100倍の人に届けようと考えました。この逆転の発想に、多くのアパレルブランドが賛同。これまでに約150のアパレルブランドと、累計約1,150万点のORGABITSアイテムを生産してきました。(2024年6月末時点)

アパレルアイテムにオーガニックコットンを取り入れることで、みんなで“ちょっと(bits)”ずつ地球環境や生産者に貢献しようという想いから生まれた「ORGABITS」。この活動に「環境や社会のためにもちょっといいことをしていこう」という想いが付加され、社会貢献活動をしている団体に売り上げの一部を寄付する「ちょっといいことプロジェクト」が2012年に始動しました。

2022年より、「むすびえ×ORGABITS(オーガビッツ)」プロジェクトが誕生し、イオンのエシカルファッションブランド「SELF+SERVICE(セルフ+サービス)」のご賛同のもと、キッズアパレル13種類の売り上げの一部をむすびえにご寄付いただくこととなりました。

今回は当プロジェクトの担当である、営業企画室の八木修介さんにお話を伺いました。

営業企画室 八木さん

── 社会貢献活動の全体像と、地域社会に向けた支援をすることへの想いについてお聞かせください。

ORGABITSではオーガニックコットンを使用した商品を通じて、さまざまな団体への寄付活動を行っています。オーガニックコットンを使用した商品に活動内容を伝える下げ札タグをつけ、1枚につき1円をインドのコットン農家の支援に充当してきました。さらに、2012年に始まった「ちょっといいことプロジェクト」では、「もっと団体さんを支援したい」というブランドに向けて、製品1枚につき10円を社会的・環境的な活動を行う団体へ寄付する仕組みをご提案しています。オーガニックコットンを使うだけでなく、コットン農家の支援や社会貢献活動を組み合わせることで、より大きな価値を生み出すことができ、購入を通して消費者の方々も「ちょっといいこと」に参加することできます。2024年6月末までに、150以上のブランド企業がORGABITSの活動に賛同してくれています。

「ちょっといいことプロジェクト」が始まったきっかけは、テレビで紹介されていたクリニクラウン(臨床道化師)*の活動です。それをたまたま目にした前任者が「なにか一緒にできることがあるのでは」と実際に活動の拠点である大阪に足を運び、話し合いを重ねて、現在の団体への支援の形がうまれました。

*病院(クリニック)を訪問する道化師(クラウン)のこと。入院生活を送る子どもの病室を定期的に訪問し、子どもの成長や発達をサポートする活動を行っています。

豊島株式会社は、商社という立場を活用しながら一から仕組みをつくることができる会社であり、個人の想いを形にしやすい企業文化があります。ORGABITSがブランドと支援団体をつなぐ架け橋となり、「世の中には素晴らしい活動をしている団体がある」ということを企業とともに伝え、広めていくことにこそ、私たちの価値があると考えています。

── さまざまな団体と連携しながら進められているプロジェクトについて、支援をしてみての想いや、実際支援している中で感じていることなどを教えてください。

私自身、この業務に携わるまで、社会貢献活動を行う団体について深く知る機会はありませんでした。しかし、知るにつれて、消費者に最も身近な衣料品を通じて、こうした活動を伝えていくことの大切さを実感するようになりました。

印象に残っているのは、クリニクラウンさんのコロナ禍での取り組みです。病院を訪問して子どもたちを笑顔にする彼らの活動は、新型コロナウイルスのパンデミックによって一時的に中断を余儀なくされてしまいました。しかし、その状況でもZoomを活用し、画面を通して子どもたちと交流を続けていました。直接の訪問ができなくても、カメラ越しに伝わる彼らのエネルギーや、画面の向こうで笑顔になる子どもたちの姿を見て、「新しい支援の形がある」と感じたことを覚えています。

私たちは単にブランドに支援団体を紹介するのではなく、団体の想いや活動の背景をしっかり伝えることを大切にしています。実際に見て、聞いて、感じたことを言葉にすることで、ブランド側にもより深い共感を得てもらえるからです。

通常、この取り組みに関心を持ってくれたブランドには、展開する地域やターゲット層を考慮し、適切な支援先を紹介しています。一方で、ブランド側から「この団体を支援したい」というリクエストを受けることもあります。さらに、「こういう活動をしている団体と協力したい」というブランドの要望をきっかけに、新たな団体とのパートナーシップを築くこともあります。

むすびえさんとの出会いも、イオンさんのファッションブランド「SELF+SERVICE(セルフ+サービス)」についてのご相談がきっかけでした。当時、SELF+SERVICEから、「ブランドのお客さまに身近な、親子にフォーカスした団体に寄付できないか」という相談を受け、「親子」をキーワードに調べていく中で、むすびえさんに行き着きました。

衣・食・住の「衣」を担う私たちにとって、「食」にフォーカスしながら、親子や地域の人々がつながる場を支援するむすびえさんの活動は、とても共感できるものでした。それまでこども食堂の取り組みについては詳しく知りませんでしたが、今回のパートナーシップを通じてその意義を学び、こども食堂を支える各地のネットワーク団体の発展に貢献できればと考えるようになりました。

── むすびえとの協働事業を通じてのご感想や、今後の展望などをお聞かせください。

当社では30年前からサステナブル素材を取り扱っています。ファッションの原材料である綿花から、生地、糸、最終製品まで、サプライチェーン全体に関わる中で、ファッション業界が環境に与える影響の大きさにいち早く気づき、「環境負荷を軽減できないか」という想いを持っていました。その想いが、サステナブル素材の活用や、社会貢献を目的とした寄付活動へとつながっています。

ORGABITSの活動の目的は、ブランドと団体の間に立って両者を結びつけること、そして商品を通じて消費者へ想いを伝えていくことにあります。今後も活動の内容に変わりはありませんが、伝え方や方向性にはまだ多くの可能性があると考えています。むすびえさんとの取り組みにおいても、どのブランドにどのようなメッセージを届けるべきか、さらに深く考えていきたいと思っています。

ORGABITSでは毎年8月に、取り組みに参加いただいている団体や企業の方々をお招きし「感謝の会」を開催しています。活動の分野は異なりますが、根底に共通した想いを持っている方々が集まって話し合うことで、予想もしなかった化学反応が生じることがあります。そして、1対1の関係だけでは生まれなかったアイデアやコラボレーションが形になることもあるのです。むすびえさんの5周年記念Tシャツも、この会で出会った学生団体がデザインしたものでした。

当社が関わることで、「何か良いことをしたい」と潜在的に思っている企業に支援の場を提供でき、さらに新たな支援のつながりが広がっていることを嬉しく思っています。これからも、むすびえさんやこども食堂の活動がより多くの人に伝わることを願っています。


むすびえメンバーより

普段、支援してくださる企業さんが中心となって集まる機会はあまりないのですが、「感謝の会」という形で横のつながりができる機会をつくってくださっていることは、とてもありがたいと思っています。実は、豊島さんが運営しているモノづくりサイト「BUZZU(バズユー)」でグッズを作っている企業が、豊島さんを通じてむすびえの活動を知り、売上の一部を寄付してくださったこともありました。新しいつながりがよい循環を生むそのサイクルに、私たちもともに参画していけたらと思っています。

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