「子どもの安心安全な居場所づくりについて、私たちの地域でも研修会を開催したいのですが……」
そんな声をかけてくださったのは、千葉県松戸市で行われた研修に参加していた、柏市こども食堂連絡会事務局の石川美和さん。研修を受けた時にご自身の中に浮かんだのは、子どもの安心安全を考えたこども食堂の運営が本当にできているだろうか、ということだったそうです。
30か所ものこども食堂がある柏市でも運営者がともに学ぶことで、子どもも大人も安心していられる場所をこれまで以上につくっていきたいという思いから、今回の研修会が開催されました。
「私たちの地域でも、こうした研修を開催してみたい」。そんなご要望がありましたら、ぜひご連絡ください!
※研修実施サポート費用、研修ファシリテーター料金(外部講師の場合含む)は、無償です。
<概要>
テーマ:こどものセーフガーディング~安心安全なこどもの居場所づくりとは~
日 時:2024年10月14日(月)13:30~16:30
会 場:ウインズ南柏(千葉県柏市)
主 催:柏市こども食堂連絡会
共 催:千葉県子ども食堂連絡会
協 力:認定NPO法人ACE、千葉県こども食堂サポートセンター、認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
後 援:柏市、社会福祉法人柏市社会福祉協議会
講 師:認定NPO法人ACE 成田由香子さん、杉山綾香さん
参加者:こども食堂や居場所の運営者およびスタッフ、行政職員など約30名
<内容>
子どもとの関わりで気になること
こども食堂や居場所などで活動する大人は、子どもと接する上でどのようなことに気を配る必要があるのでしょうか。まずは講師から、子どもの権利や子どものセーフガーディングについての講義がありました。
次に、実際の活動の中で起きた、子どもにとって安心安全ではないエピソードとその対応について、グループ内で共有するワークを行いました。
グループで話し合われた内容を共有すると、様々な視点からの事例が挙がりました。
あるグループの参加者:
「プレイパークの運営に参加していますが、大学生ボランティアに女の子がくっつきたがります。その子に注意してもやめる様子はなく、大学生も“だって来ちゃうんだもん”と、なかなか改善されません」
↓
講師:
「家庭環境など、様々な背景からアタッチメントを求める子どもがいるので、そうした欲求を否定する必要はありません。大人の方からは積極的に触らない、ハイタッチなど別の関わりにするなど工夫しながら、触れてほしいというニーズを受け止めた対応ができるといいですね」
あるグループの参加者:
「子ども同士でたたくなどのトラブルが発生した際、いつ介入したらいいのかタイミングに迷います」
↓
講師:
「セーフガーディングの考え方を活かし、参加する人の“お約束”をつくっておくと、子ども同士のトラブル回避にもつながりそうです」
あるグループの参加者:
「子どもの主体性を尊重できているのか気になります。“子どもにこういうことを持ち帰ってもらいたい”という思いが先立ち、実は子どものニーズと異なることを押し付けていないかと反省しています」
↓
講師:
「おっしゃるように、押し付けになっていないか、自ら疑問を持って自覚的になることが、最初の1歩として大事だと思います。子どもに教えたい、体験させたい、という大人の思いで活動したり子どもと接してしまうこともあるかもしれませんね。子どもは大人の意向に合わせて行動することもできるし、違和感があっても聞かれなければ何も言わない、聞かれても言いにくい場合もあります。子どもが主体的に“居たい、行きたい、やってみたい”と思える場になっているか、安心安全な方法で、子どもの気持ちや声を聴くことができるとよいと思います」
行動規範があると大人も安心して活動できる
もしも子どもから、心配ごとや困りごとを相談されたら……。そんな時、大人はどのような対応をしたらよいのか、大人の反応によって、子どもはどんな気持ちになるのかを体感するロールプレイも行われました。
●ワークの流れ
①参加者がペアになり、大人役と子ども役に分かれる。
②子ども役になった人は、配布資料に書かれたいくつかの困りごとのシーンから、どれか一つを選び、大人役に相談しようとする。
③大人役は、以下のパターン1、2の順で、2分間ずつ子ども役に接する。
パターン1:子どもの話に関心を持たない、信じない、否定する、子どものせいにする
パターン2:子どもの話を一生懸命聴く、否定しない、アドバイスしない、子どもの気持ちに共感して聴く、話してくれたことをねぎらう、話してくれたことに感謝する
迫真の演技でパターン1と2を演じきった大人役に対し、それを受けた子ども役から感想が共有されました。特に大人が話を聴いてくれない時の子どもの気持ちが印象に残ったようです。
【パターン1:大人が話を聴いてくれない場合の感想】
・2分間話すワークでしたが、とても長く感じました。会話が続きませんでした。
・「居場所にいる時、大人やスタッフに見られない所で、年上のお兄さんから蹴られたりパンチされたりするのが嫌だ」というシーンについて相談しました。大人役が私の話を聴いてくれないので、本当は1回しかされていないのに、「毎回パンチされる」と、ちょっとした嘘をつきたくなりました。時々子どもは大げさに言ってしまうことがありますが、きっと注意を向けてほしい、自分の話を聴いてほしい、という気持ちが背景にあるのかもしれないと感じました。
・「子ども食堂にいる時、大人に箸やお椀の持ち方/食べ方について細かく言われるのが嫌だ」というシーンについて相談しました。大人役から「あなたが将来、外に出た時に恥ずかしくないように教えてくれているんだよ」とアドバイスがありましたが、私は嫌な気持ちになりました。アドバイスは頭で反応されることですが、心で受け止めてほしかったのだと思います。寂しかったです。
【パターン2:大人が話を聴いてくれる場合の感想】
・大人役の方が、最初に「話してくれてありがとう」と言ってくれたのがとても嬉しかったです。もっと話したくなりました。
大人役と子ども役、それぞれを体験することで、子どもの話を聴く時のあり方を感じることができました。また講師からも、子どもから相談があった時に心がけることやしてはいけないことについてアドバイスがありました。
<参加者の声>
・セーフガーディングについて学べることはもちろん、グループでのシェアの時間など、参加者同士の意見交換がとてもよかったです。
・とても勉強になりました。子どもが子どもらしく一人の人間として居心地が良く感じる居場所づくりに対してのケアの必要性を強く感じ、否定せず、傾聴することの大切さを学ぶことができました。ありがとうございました。
・これから(こども食堂の)立ち上げに参加する予定なので、その前にこの話を聞けたので、これからの活動に参考になると思います。
・町会ボランティアで十分話し合い、地域に沿ったセーフガーディングの作成をしたいと強く思いました。
こども食堂や子どもの居場所が、参加するみんなにとって「安心していられる場所」であり続けるために、むすびえではこうした研修会の開催をサポートしています。研修会を実施してみたいという地域ネットワーク団体およびこども食堂運営者の皆さまは、ぜひ以下よりお問い合わせください。
担当:鈴木・出原・光田
※研修実施サポート費用、研修ファシリテーター料金(外部講師の場合含む)は、無償です。