むすびえは2024年6月、全国の男女4,700人に、こども食堂の認知度やイメージ、参加状況などについて調査しました。その結果、こども食堂の認知率は初めて9割を超え、参加率も6.1%に上昇していました。
調査は株式会社インテージリサーチ(以下インテージリサーチ)に委託し、同社のモニターから抽出した各都道府県の男女各50人、計4,700人から回答を得ました。今回の調査は、昨年6月に続き2度目の調査です。いずれも調査対象は15歳~79歳で、15歳未満の子どもは含まれていません。
調査の結果、こども食堂の認知率(名前を聞いたことがある)は91.4%(前年87.7%)でした。調査対象が少し異なりますが、インテージリサーチが2018年~2020年に行った同様の独自調査では、2018年時点の認知率は72.2%でした。その後徐々に上昇を続け、今年、初めて9割を超えたことになります。
今回の調査で、こども食堂の「内容も知っている」と答えた人は49.4%(前年47.3%)と上昇していました。一方、「名前を聞いたことはあるが、内容は知らない」という人が42.1%(前年40.4%)、「名前も聞いたことがない」という人が8.6%(前年12.3%)いました。
また、こども食堂の多くは利用者に年齢など条件を付けておらず(※)、多世代が交流できる居場所となっていますが、利用対象について「年齢や生活状況によらず誰もが行くところ」と答えた人は36.2%(前年29.0%)で上昇したものの、活動について十分理解されているとはまだ言い難い状況でした。
(※ 第9回「こども食堂の現状&困りごとアンケート2024」調査では、71.7%が「年齢や属性などによる参加制限を設けていない」と回答)
一方、参加状況については、利用者として参加したことがある人が6.1%(前年3.4%)、支援者(寄付者)として活動に参加したことがある人が6.4%(前年4.2%)、運営者やボランティアとして参加したことがある人が3.6%(前年3.3%)と、いずれも増加していました。
また、今回から社会的つながりの有無や、暮らしぶり(家計の状況)と、こども食堂の認知率や参加率との関係についても調べました。地域社会とつながりが薄い人は認知率や参加率が低く、暮らしぶりについて「大変苦しい」と答えた人は認知率や参加率が低いという結果になりました。
むすびえは、こども食堂の支援を通じて、誰も取りこぼさない社会の実現を目指しており、こども食堂に対する理解が社会に広く浸透するよう今後も活動を続けてまいります。
【2024年度調査の結果(一部抜粋)】
◆こども食堂の認知率は91.4%に上昇
こども食堂等の活動について、「名前を聞いたことがある」と答えた認知率は、「こども食堂」91.4%(前年87.7%)、「フードバンク」77.9%(前年75.4%)、「フードドライブ」44.6%(前年38.4%)、「フードパントリー」31.2%(前年27.4%)でした。
こども食堂について「内容も知っている」と答えた人は49.4%(前年47.3%)と微増していました。
※各取り組みの定義は以下の通り
- こども食堂:子どもが一人でも行ける無料または低額の食堂
- フードバンク:包装の破損や過剰在庫、印字ミスなどの理由で流通に出せない食品を企業等が寄付し、施設や団体、困窮世帯に無償提供する活動
- フードドライブ:家庭で余っている食べ物を学校や職場などに持ち寄り、まとめて地域の福祉団体や施設、フードバンクなどに寄付する活動
- フードパントリー:ひとり親や生活困窮者など、生活に困っている人々に食料を無料で提供する活動
◆女性30代以上は95%以上が「こども食堂」を認知、男性は30代が低め
性年代別に見ると、「こども食堂」の認知率は、男性は88.4%(前年83.1%)で、女性は94.4%(前年92.2%)で、女性の方が、認知率が高い傾向がありました。
男性では50代から70代は90%を超えており、一方で10代が74.2%(前年70.9%)、30代が79.2%(76.5%)と低い結果になりました。女性は30代から70代で95%を超えており、70代では99.4%に達していました。ほとんどの性年代で前年より上昇していた中、女性の20代のみ80.9%(前年86.1%)で低下していました。
「内容も知っている」は全体で49.4%(前年47.3%)。性年代別で見ると、男性では子育て世代に相当する30代が30.7%(前年33.5%)、40代が36.2%(前年32.1%)と低く、女性では全世代で55%を上回りました。
◆こども食堂の認知経路はテレビ、新聞などが上位
こども食堂について見聞きした認知経路は、「テレビ」が77.5%(前年80.2%)と最も多く、「新聞(オンライン含む)」31.5%(前年32.1%)、「ウェブサイト」15.7%(14.3%)、「SNS」11.8%(8.9%)と続いていました。
◆多くのこども食堂に参加条件はないが、利用対象が「誰でも」との回答は依然36.2%と低い
こども食堂の利用対象について、5段階で印象を聞いたところ、「子どもだけ」が55.0%(前年58.1%)、「ひとり親家庭」が53.5%(前年54.0%)、「生活困窮者(家庭)」が59.1%(前年56.8%)、「年齢や生活状況によらず誰でも」が36.2%(前年29.0%)でした。「誰でも」という人は他に比べてまだ少ないものの、前年より約7ポイント上昇していました。
◆こども食堂のイメージ「誰もが利用し食事ができる」26.6%
今回から、こども食堂がどんな場所だと思うか、イメージについても単一選択で聞きました。「子どもだけが利用し食事ができる場所」が最も多く27.5%、「子ども・保護者・高齢者・障害者など、誰もが利用し食事ができる場所」が26.6%、「主にひとり親世帯の子どもや保護者が利用し食事ができる場所」が19.4%、「主に生活困窮者(家庭)が利用し食事ができる場所」が14.1%、「子どもと保護者が利用し食事ができる場所」が12.4%と続いていました。
性年代別で見ると、「誰もが利用し食事ができる場所」を選んだ人が、女性の50代で33.5%、60代で35.3%と高く、男性の10代で14.5%、20代で17.9%と低い結果が出ました。
◆こども食堂に「参加経験あり」は6.1%に上昇
こども食堂の利用については、参加経験あり(利用したことがある)が6.1%(前年3.6%)、参加意向あり(利用経験なし)が35.7%(前年35%)、参加意向不明(わからない)が38.2%(前年35.9%)、参加意向なしが20.0%(前年25.5%)という結果になりました。参加経験ありは、前年の倍近くに伸びたことになります。
◆地域社会とのつながりが薄い人の認知率や参加率が低い
社会的つながりとの関係については、「ボランティアグループへの参加」「スポーツ関係のグループやサークルへの参加」「趣味・学習・教養関係のグループやサークルへの参加」「自治体や社会福祉協議会などの通いの場(サロン)への参加」「近所づきあい」といった地域社会とのつながりの有無と、こども食堂の認知・参加との関係を調べました。認知については、こうした地域社会とのつながりがある人は、いずれもこども食堂の認知率が95%を超えましたが、「あてはまるものはない」と答えた人は88.0%と低い結果が出ました。
また、こども食堂の利用者としての参加については、「ボランティアグループ」に参加している人の39.2%、「自治体や社会福祉協議会などの通いの場(サロン)」に参加している人の35.7%が、参加経験があると答えた一方で、「あてはまるものはない」という人は2.8%と低い結果になりました。地域社会とのつながりが薄い人は、こども食堂の認知率や参加率が低いことが示されました。
◆暮らしぶりが「苦しい」「大変苦しい」人の参加率が低い
暮らしぶり(家計の状況)については「大変ゆとりがある」「ゆとりがある」「ふつう」「苦しい」「大変苦しい」の5段階で回答してもらった結果と、こども食堂の認知・参加との関係を調べました。こども食堂の認知率は「大変苦しい」と答えた人では78.8%で、「ゆとりがある」「ふつう」「苦しい」と答えた人が90%以上だったのに比べて低いという結果が出ました。
こども食堂の利用者としての参加については、「大変ゆとりがある」と答えた人では21.0%に達したのに対し、「苦しい」と答えた人では4.2%、「大変苦しい」では3.3%でした。また、「大変苦しい」と答えた人では、参加意向不明が49.3%と他の層に比べ多くなっていました。
【調査概要】
・調査目的:全国での「こども食堂」の認知状況やイメージ、参加状況・参加意向などを把握する
・実施時期:2024年6月6日(木)~6月14日(金)
・調査対象:全国47都道府県、15~79歳の男女(インテージ・インターネットモニターより抽出)
・回答者数:4,700サンプル(都道府県別の認知状況の比較を行うため、男女50人ずつ計100サンプルを47都道府県から回収)
・集計方法:2020年の国勢調査の人口構成比に合わせてウエイトバック集計を行った
・調査会社:株式会社インテージリサーチ
【調査報告書】
https://musubie.org/wp/wp-content/uploads/2024/10/report_20240827.pdf
【2023年度調査の報告】
【本件に関するお問い合わせ先】
認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
調査・研究部門 research@musubie.org