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【研修会実践報告】子どもとおとなにとって安心安全なこども食堂/居場所とは 研修会を開催しました

「居場所」と聞いて、どんな場所をイメージするでしょうか。
ある辞書には2つの意味が紹介されています。1つ目は「人などが住んでいる所。居どころ」。そして2つ目は「人が、世間、社会の中で落ちつくべき場所。安心していられる場所」。
こども食堂は多くの場合、2つ目の意味で「居場所」と表現されますが、今回の研修会の開催は、主催者からの「子どもや大人の安心安全が守られているか、気になることがあって……」という声がきっかけとなりました。

市内で起こった事例を発表するふなばし子ども食堂ネットワーク代表 及川 恵さん

「私たちの地域でも、こうした研修を開催してみたい」。そんなご要望がありましたら、ぜひご連絡ください!
※研修実施サポート費用、研修ファシリテーター料金(外部講師の場合含む)は、無償です。

<概要>
テーマ:子どもとおとなにとって安心安全なこども食堂/居場所とは
日 時:2024年6月30日(日)13:30~16:30
会 場:船橋市中央公民会 講堂(千葉県船橋市)
主 催:ふなばし子ども食堂ネットワーク
共 催:千葉県子ども食堂連絡会
協 力:認定NPO法人ACE、認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
後 援:千葉県船橋市
講 師:認定NPO法人ACE 成田由香子さん、杉山綾香さん、坂口志保さん
参加者:こども食堂や居場所の運営者およびスタッフ、行政職員など約50名

<内容>
活動の中で起きるモヤモヤ、みんなどうしてる?
子どもの居場所づくりにおいて大切にしたい視点は、子ども自身の「居たい・行きたい・やってみたい」だといいます。居場所をつくる大人の役割は、子どもの自主性を尊重しながら、その場にいる人みんなの安心安全を守ることです。
講師から子どものセーフガーディングが紹介された後、こども食堂/居場所で起きた、子どもにとって安心安全ではないエピソードと対応について、グループ内で共有するワークが行われました。
※こども家庭庁「こども・若者の居場所づくりにかんするこども・若者向け報告書」令和5年3月

活動中の出来事を付箋に書きシェアするワークを実施

グループワークで話し合われた内容を会場内で共有すると、各自が感じていたモヤモヤを少しずつ解消することができました。そのやり取りをご紹介します。

あるグループのこども食堂関係者:
「私たちのこども食堂では、子連れで参加しているボランティアスタッフがいます。中には未就園児を連れてくる方もいるのですが、ある日、大人が目を離した隙にその子が一人で外に出て自転車に乗っていたことがあり、ヒヤッとしました。みなさんはどうしていますか?」

別のグループのこども食堂関係者:
「私たちは、活動を調理班と交流班に分けています。調理班は子連れでの参加はNGで、子どもを預けられる時間だけ活動してもらっています。一方、交流班は子どもと遊ぶ係なので、子連れ参加もOKです。代表も小さな子どもがいるので、調理には参加していません」


あるグループのこども食堂関係者:
「セーフガーディングでは、“べたべた触る”ことについて注意喚起されていますが、子ども自身が愛着を求めて、男性スタッフに抱っこをせがんだり膝の上に座りたがったりする場合があり、どう接したらいいか迷います」

講師:
「子どもの年齢や発達の状況などによって、愛着を求める行動はあると思います。なので、拒否はせず、子どもの気持ちを受け止めることは大切です。その上で、抱っこを求められた時は子どもと話し合ってハイタッチなど他の方法に代えたり、膝の上に座りたがったら“ここに座布団あるよ”と隣に座ることを促したりすることもできます。基本的に、大人からは必要以上のボディタッチはしないという共通ルールを設けると良いのではないでしょうか」

行動規範があると大人も安心して活動できる
では、どのような共通ルールをつくると、こども食堂や居場所で子どもたちが安心安全に過ごすことができるのでしょうか。
実際に「セーフガーディング行動規範」を作成し、スタッフ同士で共有しているこども食堂の運営者から、作成の背景や活用方法についての報告がありました。

夏見のおうち子ども食堂 河合容子さん:
「こども食堂を始める際、子どもを集めて活動するということは、安心安全な環境づくりが絶対に必要だと思いました。ボランティアを募集すると、男女区別なく色々な方がいらっしゃったので、スタッフ同士の共通認識を持つために“大切なひとりひとりの安心安全を守るためのルール”をつくり、これに同意した証として署名してもらうことにしました。
最初は少し、仰々しい印象もありましたし、スタッフを信じていないわけでは決してありません。けれど、特に学生ボランティアを受け入れる際に、その保護者にルールを見てもらうことで、我が子の活動への理解も深まると思います。子どもだけでなく大人にとっても、安心安全に活動するために必要なものだと感じています。
このルールは、連絡用のLINEグループに投稿することで、みんなで定期的に再確認するようにしています」

河合さんの実践報告に、参加者は真剣なまなざしを向けます
夏見のおうち子ども食堂の「ボランティア活動に関する誓約書」

事例報告の後は、大人役と子ども役に分かれてペアワークを行い、行動規範への理解を深めました。すると、会場から次のような質問がありました。

こども食堂運営者:
「私たちのこども食堂には障がいのある参加者が来ているのですが、ある時、その方のしぐさを真似する子どもがいて、どのように注意すべきか迷ったことがあります。行動規範は大人に向けたルールのようですが、子どもにも共有することはできるのでしょうか」

講師:
「まずは大人向けに、子どもへの接し方についての約束・ルールをつくることが大切です。ですが、実はその中には、子どもにとっても、子ども同士や子どもと大人の間で、守りたいルールも含まれているので、子ども自身がそれを知ることも大切です。子どもにも分かりやすい内容にして、こども食堂などの活動の場で、壁に貼っていつでも見えるようにしておくと、安心安全でない行動の抑止力になります。共通ルールとして浸透させることで、今回のような事案が起きた時に“今の行動は、ここに書いてあることと関係するんじゃない?”と、子どもとしっかり向き合って話をするきっかけもつくれるのではないでしょうか」

<参加者の声>
・これまでの活動において、子どもとの関わり方や権利等についてほとんど考えたことがありませんでした。全てが新しい視点や考えで、今後の活動に大変役立つ内容となりました。
・ボランティアをする人=いい人と思いがち・思われがちですが、リスクがあることをみんなが知って子どもの安全を守るためにできることを考えたいと感じた。
・行動規範については前々から必要性について考えていました。今回具体的な例やまた何のために必要かということを教えていただき、今後に役立てたいと思います。

今回の研修会では、会場から次々と質問が挙がりました。それだけ現場では、子どもたちとの関わりの中で迷いが生じる場面があるのだと感じました。子どもの安心安全を守ることは大前提ですが、大人にとっての安心安全を守るためにも、ルールづくりが有効であることがわかりました。
こども食堂が、参加するみんなにとって「安心していられる場所」であり続けるために、むすびえではこうした研修会の開催をサポートしています。研修会を実施してみたいという地域ネットワーク団体およびこども食堂運営者の皆さまは、ぜひ以下よりお問い合わせください。

担当:鈴木・出原・光田
※研修実施サポート費用、研修ファシリテーター料金(外部講師の場合含む)は、無償です。

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