認定NPO法人
全国こども食堂支援センター・むすびえ

子どもの笑顔が育む社員の成長。地域と事業をつなぐ、こども食堂
~株式会社アベストコーポレーション~


「Corporate Supporters’ Voices むすびえのむすびめ」では、むすびえとともに歩む法人支援者の皆さまへのインタビューを通じて、協働の背景や想い、そして広がるつながりのかたちをご紹介します。



ビジネスホテルやリゾートホテルなど全国に21店舗を展開し、不動産事業やペット事業も手掛ける株式会社アベストコーポレーション。2022年9月のホテルアベストグランデ高槻(大阪府)でのこども食堂開催を皮切りに、神戸ポートタワーホテル、ホテルSUI京都清水でもこども食堂を展開しています。それも画一的な実施ではなく、社員が自ら手を挙げ、各店舗ごとにオリジナルな内容で、毎月開催しているとのこと。楽しそうに取り組む様子に、うちの店舗でもやりたいという声が上がり、こども食堂の輪がさらに広がってきているそうです。

今回は、代表取締役 松山さん、取締役副社長 桝一さん、IT事業部 中山さんに、こども食堂の立ち上げの経緯や運営方法、また、今後の展開についてもお話を伺いました。

(画像左から桝一さん、松山さん、中山さん)

神戸市との事業が起点。行政と連携し、こども食堂を開設

こども食堂立ち上げの前から、当社では児童養護施設の子どもたちを招いた食事会を開催してきました。きっかけは、子育て経験のある社長が「子育て家庭に対して、何か支援をしたい」と考えたこと。手探りで始めるよりも、まずは何ができるかを聞いてみようと、本社のある神戸市に相談しました。神戸市とはそれまでも事業を通してやりとりがあったため、子ども支援の担当部署までスムーズに繋がることができました。相談の結果、2022年から毎年14施設、人数にして約400名をホテルのディナーバイキングにご招待する活動を今も継続しています。

さらにもっと幅広く子ども支援を行いたいと考え、高槻市に神戸の事例をお話ししたところ、こども食堂ができるのではという話になり、アベストグランデ高槻でこども食堂を始めることになりました。高槻では、2022年9月の初開催以来、毎月こども食堂を開催しています。また、ここで立ち上げや運営のフローを確立し、その経験を他の地域での開催にも活かしてきました。

ホテルアベストグランデ高槻でのこども食堂開催の様子

ホテルだからこそできる経験に価値

こども食堂の取り組みが最初からうまくいったわけではありません。私たちも最初は手探りでした。社員からはホテルの豪華な食事でこども食堂を行うことへの戸惑いや、「本来のこども食堂の主旨に沿わないのでは」というネガティブな意見もありました。ただ、地域の大学の先生に相談したところ、「ホテルでのこども食堂の開催は、子どもの体験格差をなくすことに繋がる」というアドバイスを受け、私たちがやる意義を再認識しました。一方で、「こども食堂=困窮家庭のための場」というイメージはまだまだ強く、足を運びづらいという声を聞くこともあり、集客にはまだ苦労があります。

ホテルでの食事が子どもにとって貴重な経験に

社員自らが企画。開催方法にも個性が

実際にこども食堂を始めた今、大学の先生が仰っていた価値を改めて実感しています。高槻・神戸・京都で、こども食堂を立ち上げ、運営しているのは社員自身。各地でその土地、その人ならではの内容が企画されています。

たとえば、京都でのこども食堂立ち上げに動いたのは、調理場の料理人でした。彼を動かしたのは、「子どもたちに、京都ならではの食文化を伝えたい」という思い。食育に重点を置き、京都の食材を使うことを心がけています。また、巻き寿司作りなどを通して、子どもたちが食について学べる機会を提供しています。

ほかにも、神戸のこども食堂にそば職人を呼んだときには、参加者一人ひとりにそば打ちを体験してもらいました。時間がかかるので、職人のそば打ちを見て、その間にそばを茹でて提供した方が早い。ですが、自分で体験した方が思い出に残るので、開催するときには、そこにこだわりました

こうした経験を通じて、私たちだから提供できる価値への理解を深めてきました。これは始めてみたからこそわかったこと。すべてを完璧に整えてから始めるのではなく、まずできる範囲でやってみることも大切だと思います。

神戸ポートタワーホテルでの巻き寿司作り

互いに助け合って解決する、こども食堂を支える社風

こども食堂が自発的に広がっている背景には、全社会議があります。当社では、こども食堂のことに限らず、現在の経営状況や各地の取り組みについて、毎月全社会議で共有しています。会議で他の地域のこども食堂の取り組みを聞くことが、「私もやりたい」という思いに繋がっているようです。

立ち上げについては本部も支援しますが、わからないことや相談したいことがある場合は、それぞれが他の店舗で既に経験している担当者などに連絡を取って解決しています。当社には、困ったときに互いに助け合う文化が根付いているのです。

こども食堂は職人にとってお客様と接する貴重な機会

業務とは異なる経験で得られる手ごたえ

社員にとって一番のモチベーションは、子どもたちの笑顔。たとえば、料理人がケーキのデコレーションを披露すると、子どもたちの顔がパッと輝くのです。そういう子どもたちやご家族の喜ぶ姿を見ると、とてもやめられないですね。料理人にとっても、普段はお客様の顔を直接見られないので、こども食堂は貴重な機会。こうした経験をすることで、本人からも周囲からも、次に向けたアイデアが自然と出てきます。毎月開催というのも、上で決めたことではなく、気がついたら継続できているという状況です。

すべては企業理念に還る活動

こども食堂の取り組みは、日頃お世話になっている地域への恩返しと考えています。私たちの事業は、地域があってこそ成り立つものだからです。しかし、こうして振り返ってみると、こども食堂の運営は本業の成長にも繋がってきたように思います。それは、私たちの開催するこども食堂の根幹には「お客様に寄り添う」という企業理念があるからです。社員も企業理念を拠り所にして、自ら手を挙げ、企画を考えてきました。お客様に喜んでいただくことを考え、直接感謝されるという経験を通じて、社員自身も業務に繋がる気づきや喜びを得ているのではないでしょうか。

今後も、行政との連携、地域や社員の自発的な関わり、そして何より子どもたちの笑顔を原動力に、こども食堂への取り組みを続けていきたいと考えています。

また、春休みに参画した「長期休みこども食堂応援わくわくギフト」も、当社だけでは手の届かない全国のこども食堂を支援できる取り組みとして、大変意義のあるものでした。全国のこども食堂を支援できるのは、むすびえさんのネットワークがあるからこそ。すでに夏休みにも同様の企画に参画することを決めています。どちらも継続して、できるだけ多くの地域で、この取り組みを広げていきたいと考えています。