むすびえは、こども食堂に参加する子どもや保護者等へのアンケート調査から、「こども食堂で起きていること」を数字で示すことを目指し、「こども食堂への参加者の変化を捉える定量調査」を実施しました。
これまで、こども食堂でのエピソードを収集し、こども食堂で起こっていることを発信してきましたが、「こども食堂から距離のある方たちの中には、数字を伝えることでこども食堂への理解を深めてくれる方々がいる」と考えたためです。
23年度はその第一歩として、沖縄県と大阪府堺市のこども食堂さんに協力をいただき、参加者へのアンケートを実施。分析の結果、こども食堂への参加回数が他者への信頼感やつながりに統計的に有意に相関していることが分かりました。(23年度調査結果:https://musubie.org/news/9194/)
そして、24年度には全国に規模を拡大し、夏と冬でのべ10,844名へのアンケート調査を実施。全国のこども食堂で起こっていることを分析した結果、主に下記のことが明らかになりました。
◎こども食堂への参加回数の多さと、こども食堂への安心感の高さ・こども食堂で関わる人との関係性の深まりが有意に相関
こども食堂への参加回数が10回以上であることと、こども食堂への安心感の高さ・こども食堂で関わる人との関係性の深まりの間に、統計的に有意な相関関係が見られました。
具体的には、こども食堂への参加回数が10回以上の場合、「こども食堂に、悩みを相談できる人がいる」、「こども食堂に、困った時に助けてくれる人がいる」、「こども食堂に、他のひとに言えない本音を話せる人がいる」と感じる子どもと保護者が相対的に多く、さらに、子どもにおいては「こども食堂は安心できる場所」と感じる割合も高いという結果となりました。

※表の数字や記号の説明については、最終報告書(P.83)をご参照ください。
◎こども食堂への参加回数の多さと、本人の社会性の高さが有意に相関
こども食堂への参加回数が10回以上であることと、「自分は誰とでもすぐに仲良くなれる方だと思う」という回答への肯定度の高さの間に統計的に有意な相関関係が見られました。
この背景には、参加者自身が他者とのコミュニケーションを積極的にとれる、あるいは他者に積極的に働きかけられる、交流できる自負・自認があることがうかがえ、それを「社会性の高さ」と表現しています。

◎因果関係に踏み込んだ分析の結果では、子どもにおいて、こども食堂への参加回数の多さと、他者への信頼感の高さの間には有意な関連が見られた
第1回と第2回の調査で紐づけることのできた参加者を対象にした、因果関係に踏み込んだ分析の結果、参加回数が10回以上の子どもでは、「他人もある程度信頼できる」と感じている割合が8.1ポイント高いことがわかりました。 このことから、こども食堂への参加回数が増えることで、他者との関わりの経験が積み重なり、他人への信頼感が高まっていくのではないかと考えることができます。

また、「参加条件がない」こども食堂に参加する子どもでは、参加回数が10回以上だと、より広範囲のアウトカムに有意な影響がみられました。具体的には、「こども食堂に、悩みを相談できる人がいる」、「こども食堂に、他のひとに言えない本音を話せる人がいる」、「自分は誰とでもすぐ仲良くなれる方だ」、「他人もある程度信頼できる」と感じる子どもが相対的に多いという結果になりました。
この結果より、多様な方が参加しているこども食堂に参加する子どもは、参加回数が多くなると、多様な方との交流を重ねる中で、こども食堂で関わる人との関係性の深まりや自分自身の社会性の高まりなどを感じやすくなるのではないかと解釈しています。

詳しい調査結果などは、以下の資料をご参照ください。
※最終報告書(概要版・全8ページ)
※最終報告書(全99ページ)
以下は、アンケートの自由欄に寄せられた子どもたちのイラストです。
子どもたちにとっての「こども食堂」を知るヒントになるかもしれません。
※「公開ワークショップ」について
むすびえでは、こども食堂で起きていることを、こども食堂で出会ったエピソードをお話しする公開ワークショップの開催などを通して、各地の地域ネットワーク団体と共に発信してきました。
今回、これまでに収集できた100以上のエピソードの分析を行い、参加する子どもや保護者だけでなく、こども食堂の運営スタッフや地域の方にも変化が生まれていることがわかってきました。
「こども食堂への参加者の変化を捉える定量調査」の結果と合わせて、「公開ワークショップのエピソード分析」をご覧いただくことで、定量と定性のそれぞれの面から、こども食堂で起こっていることを読み解けるかと存じます。
【「公開ワークショップのエピソード分析」の調査報告はこちら】
【本件問合せ先】
認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
調査・研究部門
research@musubie.org